【初級者向け】騙されないための基礎知識

投資戦略

投資をスタートすると、新たに作成したネット証券やネット銀行やクレジットカード会社からお得なキャンペーンを打ち出した魅惑的な勧誘が増えてきます。重要な確認事項もあるため全てのメールをスルーしてしまう事は出来ませんが、新たな金融商品の紹介メールは最初は全て削除でOKです。NISAやiDeCoでオルカンに投資しているだけでは証券会社側の利益率 (証券会社側の儲け) は微々たるものになってしまうため、利益率の高い商品を売り付けに来るわけです。逆に考えてみると、オルカン投資などのインデックス投資は投資家側にとってはコストが抑えられていて優良な商品という事になります。今回は初心者が甘い誘惑に騙されないための注意事項や心構えを紹介しておきます。

投資と投機とギャンブル

投資とは・・・長期的な資産運用でコツコツお金を増やしていくイメージ

具体的には株式・債券・不動産・ゴールドなどの長期投資が該当します。参加者全員の利益と損失の合計がプラスになる、期待値がプラスになるプラスサムゲームです。

投機とは・・・短期的な価格変動による売却益を狙ったトレーディングのイメージ

具体的にはFX・CFD・先物取引・オプション取引などが該当します。参加者全員の利益と損失の合計がプラマイゼロになる、期待値がほぼゼロになるゼロサムゲームです。

ギャンブルとは・・・運や偶然の結果に依存して利益追求していくイメージ

具体的には宝くじ・競馬・競輪・競艇などが該当します。パチンコは法律的には違うと言われますが、実質的にはギャンブルと同義です。参加者全員の利益と損失の合計が明らかにマイナスになる、期待値マイナスのマイナスサムゲームです。

同じ株式にベットする場合でも保有期間や期待値のかけ方によって変化します。長期的な世界経済の成長に期待して株を保有していくなら「投資」にあたるし、短期的な利ザヤを狙ったモノなら「投機」になるし、よくわからないケド儲かるからと勧められたモノを信じ込んで買っているだけなら「ギャンブル」にあたるのかもしれませんネ。初心者は「投資」をすることを心がけてください。目先の短期的な株価の乱高下にアタフタするのではなくて、10年、15年といった長期的な目線でコツコツお金を増やしていくイメージです。想定利回りはインフレ率+5%くらいが適切だと思います。15年以上の保有で投資元本の2倍くらいになる感じだと考えてください。少し控えめに見積もって考えると、15年の平均利回りは年率で6%前後です。1年単位ではマイナスになってしまう年もあると思います。マイナス10%の年もあれば、プラス16%の年もあるかもしれません。平均年率で6%想定くらいが適切な全世界株式投資のリスクです

投資詐欺とボッタクリ対策

  • 未公開株や私募債
  • 外国通貨 (FX、外貨預金、仕組債、など)
  • 利権がらみ(太陽光発電、風力発電、iPS細胞、など)
  • プロ向けファンド (特定の人しか購入できないファンド)
  • 貯蓄型保険、外貨建て個人年金、ハイイールド債
  • FP、銀行や証券会社の対面販売、保険の訪問や相談窓口

上記のキーワードは必ずしも違法なものばかりではありません。限りなくクロに近いグレーゾーンのモノも含まれている事を明記しておきます。しかし金融庁が注意喚起しているとうり、上記のようなワードにあてはまるモノや人からの勧誘等に関しては距離をおくようにして逃げるのがベストです!

よくわからない金融商品には手を出さないのが鉄則です。わからないモノや自分が理解できていないモノに投資してはいけません。基本的に、初対面の人や聞いたことのない業者からの勧誘は全て断ったほうがいいと思います。詐欺的な勧誘では「今月中」「あと〇〇人まで」「限定〇〇人」「あなたにだけ特別に」などのフレーズがよく使われるようです。また、「上場確実」「必ず儲かる」「元本保証」「月利10%」「1年で倍」などのワードはアヤシイと疑うべきです。電話やSNS等での魅惑的な勧誘にも絶対に騙されないで下さい!さらにこういった人達は「金融庁、財務省財務局、消費者庁」などの認可を語り安心させようとするのも常套句のようです。

詐欺師に騙されないようにするために投資アドバイザーやFPに相談してしまうと、今度は合法的に (グレーゾーンも多々見受けられる形で) ボッタクリの手数料を払わされることが多いです。消費者に寄り添った人も中にはいるかもしれませんが、金融商品の販売に関しては基本的に利益相反になると心得るべきです。消費者 (投資する人) の利益は販売者 (アドバイザーを語る人) の損失になる。利益の〇%をアドバイザーに支払うといったシステムの場合も同様です。マイナスの利益になった時や想定リターン以下の利益になった時の手数料として、適切なコストに相当するのかを冷静に考えてみてください。果たしてそのアドバイスや情報は、支払った手数料に見合った利益を永続的にもたらしてくれるのでしょうか? 答えはNOだと思いますよ。

自分の頭でよく考える習慣を!

信用できるサイトや人物を厳選して複数フォローするようにしましょう。自分の投資スタイルに合った心地いいグループだけを判断材料とするのでは危険です。自分と異なる意見に関しては、冷静に自分の頭で考えて論破してみる必要があります。「メディアで報じていたから」「有名インフルエンサーが言ってたから」ではなくて、論理的に合理的に自分なりに考察してみてください。メディアは不安を煽って視聴率を上げないと利益が伸びていかないし、インフルエンサーはインプレやフォロワー稼ぎでキャッチ―な言葉をよく使う傾向にあります。複数意見でファクトチェックを行い、正しい情報をアップデートしていくようにすることが大切です。

Xにポストしたり誰かに発言したりする必要はありませんが、自分の頭の中で整理して考えてみる事はとても大事です。政治的な対立や国家間の戦争・紛争、世界の脅威となるような疫病、何が原因かよくわからない株価や為替の乱高下など、投資を継続していく中では自分と異なった意見に対峙する事が多々あります。そういった時に「まわりはこう言ってるケド、自分はどう立ち居ふるまうのがベストなのか?」と妄想を膨らませて考えるのは割と楽しい行為です。お金を増やすため、お金を守るために合理的な行動は何なのかを考えていく習慣をつけましょう!

自分の頭でよく考えて金銭的に合理的な選択をしたつもりが、実際には間違えていて損をしてしまうといったこともあると思います。自分で考えて選択した結果ならば、悔しいけれども諦めがつくと思います。投資でお金を増やした時は自分が凄い、損してお金を減らしてしまった時は国や会社・メディア・インフルエンサーが悪いでは成長していきません。投資は自己責任です。得したのも、損したのも、最終的な決定をした自分の責任です。「投資に関する選択や意思決定は、最終的には自分で決定する」といった意識付けをしていってください!

投資に関する選択で、絶対的なモノはほとんどありません。無リスク資産といわれる銀行預金や日本国債くらいでしょうか?でもピケティのr>gの法則のように、「投資しないこと自体がリスクなんだ」と言うこともできます。投資家は過去データに基づいて、再現性高く効率的で合理的な選択を求められます。人間は感情的に行動してしまいがちな生き物です。どのような投資手法がベターなのか、どの金融商品が効率的なのか、いつまで保有しているのが合理的なのか? 投資をやっていくと、買うのか、売るのか、何もしないのか、常に選択を迫られます。そしてその選択にはリスクが伴います。リスク許容度は人それぞれです。基本的にリスクを負っている人はリスクを避けてばかりの人よりも多くのリターンを得られる可能性があるし、多くの損失を被ってしまう可能性もあります。ハイリスク・ハイリターンであり、ローリスク・ローリターンです。騙されないためにも、「ローリスク・ハイリターンな投資商品」は無いと思ってください。自分の頭で考えて、納得したものに投資していくようにしましょう!

「投資」適合の金融商品

「ギャンブル」や「投機」ではない「投資」をするためには、丁半博打や短期的なトレーディングをするのではなくて、15年以上かけてコツコツと資産運用をしていく必要があります。

長期投資していく資産クラスの対象として主にあげられるのが株式・債券・リート・ゴールドです。これらの長期チャートはどれも基本的に右肩上がりに成長していることが確認できます。日本を代表する人気の投資信託であるeMAXIS Slimシリーズとファインゴールドで資産クラス別の成長力を確認してみようと思います。

資産クラス上昇(%)下落(%)平均値(%)
国内株
(TOPIX)
41.9-11.511.2
全世界
株式
56.5-12.116.3
先進国
株式
56.6-11.118.0
米国
株式
55.5-7.120.0
新興国
株式
64.2-20.38.3
国内
債券
4.7-5.3-0.9
先進国
債券
16.1-4.94.3
国内
リート
36.1-24.55.3
先進国
リート
61.0-25.29.6
ゴールド33.3-6.914.1
※eMAXIS Slimシリーズとファインゴールドの投資目論見書から抜粋した2019年5月~2024年4月末までの崩落率(年率)。ここでいう年間騰落率とは各月末における直近1年間の騰落率のこと。

上の表は5年間の崩落率ですが、50年くらいの長期でみても全資産クラスの中で株式のパフォーマンスが最高です。最近は特にアメリカ株のパフォーマンスが圧倒していて、マグ7 (マグニッフィセント・セブン) と呼ばれるアメリカの主要上位7社の成長が米国株式のパフォーマンスのほとんどを占めているような状態です。しかし、今後もずっとアメリカ中心で経済が回っていくのかどうかはわかりません。だから初心者には全世界株 (オルカン) を推奨しています。資本主義経済が今後も成長し続けると考えて、世界中の主要な株式をマルっと保有する形の投資手法です。地域は世界全体に分散させて、購入タイミングは積立投資で時間分散していきます。分配金は投資信託の中で自動的に再投資され、効率よく低コストで複利運用されていきます。またiDeCoやNISAを活用することによって、出口戦略を考える売却時に税金を控除することができます。

株式の伸び率はすごいのですが、数年に一度くらいの頻度で評価額が一気に半値になってしまうような暴落場面に出くわす事があります。たとえば投資期間15年を想定していたうちの14年目に大暴落を食らってしまうと厳しい状況になってしまいます。数年間上乗せで株価が回復するまで取崩期間を遅らせるか、投資期間を延長してさらなるリターンを狙いにいくかといった戦略変更の必要が出てきます。そのためのヘッジとして、取崩期間が近づくにつれて債券やリート、ゴールドを保有してリスク (資産評価額の上下のブレ) をやわらげていく方法もあります。長期的な想定リターンは年率でリート5%、ゴールド4%、債券3%といったところでしょうか。 (2024年現在の直近5年間の崩落率では、コロナ後のインフレの影響で債券のパフォーマンスが悪く、リートやゴールドは良好となっています) 基本的にはリスクの大きい順に「株式>リート>ゴールド>債券」と覚えておいてください。リートや債券はインカム収入がありますが、ゴールドにはありません。また、債券は金利が高い時にはインフレ負けする可能性があります。

オルカン投資のまとめ

「投資」にいちばん最適な資産クラスは株式です。パフォーマンスだけで合理的な判断をするなら、株式一択で15年以上の長期積立インデックス投資をしていくのが無難という事になります。ドルコスト平均法によって、価格変動リスクや為替リスクは平均化できます。全世界に地域分散することによって、戦争・紛争などのカントリーリスクや個別銘柄のデフォルトリスクも低減化することができます。世界の主要な取引所で売買されている大型株を時価総額加重平均で保有することによって、流動性リスクも低減することが見込めます。

投資をこらから始めていく人は、まず全世界株式インデックス (以降オルカンと呼んでいきます) のリスクとリターンがどんなものなのかを体感してみてください。このオルカン投資のリスク許容度が今後の投資判断の基準になっていきます。短期的な株価の乱高下にハラハラ・ドキドキしてしまう人は、リスク許容度に対して購入金額が多すぎるか、知識不足によりリスクについての考え方が間違えています。そういった場合は、しばらくオルカン投資で積立金額を調整しながらのメンタルトレーニングになります。投資の知識が少しずつ高まり、金銭的にもメンタル的にもリスクをもうすこし負っていく余裕ができてきたら、オルカンのポートフォリオを見直してリスク許容度を上げていきます。また目標金額に近づいてきたり出口戦略を考える時期が近づいてきた人は、リスク許容度を下げたポートフォリオを考えていくことになります。

リスク許容度を上げるには?

投資に慣れてきて、知識もある程度習得し、リスク許容度が高まってきたら、オルカン以外への投資も検討していく事もあると思います。オルカンよりもリスク許容度を上げるには、分散度合を減らしていきます。全世界株式でなくて米国株式だけで十分なのか、米国株でもSP500やナスダック100に絞るのか、FANG+やマグ7に集中投資するのか? 基本的に分散対象を小さくしようと考えている時は、「投資対象以外への分散はゴミを買わされていて機会損失をしている」といった感覚になっている時が多いです。分散対象を絞る時にはどのようなリスクが高まるのかを自分でよく考えて、損失を被った場合の対処法まで想定をしておくことが大事です。

リスク許容度を下げるには?

反対にオルカンよりもリスク許容度を下げるには、分散度合をさらに増やします。日本株やJ-REATなどの円建て資産の比率を増やしたり、債券、リート、ゴールド等の資産クラスにヘッジしていくことになると思います。全世界株のリスクについて考えるだけでも大変なのに、その他の資産クラスへの投資についても別のリスクを考慮していく必要が出てきます。基本的には債券にはインフレリスク、リートには流動性リスク、ゴールドには手数料といったコスト面のリスクが存在します。

全世界株式はプロの投資家も保有することがある優れた金融商品です。『ほったらかし投資術』ではオルカンで外貨を保有し、現金で日本円を保有し、その比率だけでリスクヘッジしていくようなシンプルな手法が紹介されています。「将来の自分のポートフォリオをどうしていくか」を考えるのは楽しい作業です。永遠に考え続けるテーマになるんだと思います!

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