インデックス投資部門のまとめとして、インデックス投資家によるよくある論争をまとめました。最終的には、目標に応じてバランスを取ったポートフォリオを構築するのが最善の戦略となります。どのような目的で投資を考えているかによってベストな回答が変わってくるような果てしない永遠に続いていきそうな論争です。各自の投資期間やリスク許容度などをよく考えて、納得のいくポートフォリオ作成を模索して行って下さい!
全世界株かSP500か?
全世界株式 | S&P500 | |
分散性 | 世界中に分散(広範囲) | 米国に集中(やや狭い) |
成長性 | ゆるやかな右肩上がり | 急激な右肩上がり |
リスク | 新興国を含むリスク | 米国依存リスク |
手数料 | やや高め | 比較的低め |
安定性 | 高度な分散効果 | 米国依存で波がある可能性 |
オルカンに代表される全世界株式は、世界中の株式市場(先進国・新興国)に時価総額加重平均で分散投資しています。2024年12月時点でのオルカンの分散度合いはアメリカが64.1%、日本が4.7%、インドが1.9%、中国はそれ以下となっています。全世界株式といっても60%以上がアメリカ株です。世界に占めるアメリカのウェイトが非常に大きいことが確認できます。定期的に銘柄入替が行われるので、保有しているだけで時価総額に比例して分散内容は変わっていきます。
S&P500は米国の大型企業500社に投資します。これにより、米国経済の成長の恩恵を直接受けられます。過去数十年間で年平均リターンが約7~10%程度(インフレ調整前)と高い成績を記録しています。特にテクノロジー企業の成長が大きな要因です。米国市場に集中しているため、米国経済が低迷すればリターンも大きく影響を受けます。ただし、米国市場は多国籍企業が多いため、間接的に世界経済に影響を受ける側面もあります。
ポイントは「今後も同様に米国株の成長を信頼できるか」がメインとなると思います。リーマンショック後から他国を圧倒する上昇チャートを描き続けている米国株が、今後30年~50年の間も安泰となるかどうかがキモとなります。ドットコムバブルの後の長期停滞のようなことになると、老後の出口戦略を考える時に厳しい状況に立たされる可能性もあります。S&P500などの米国株特化型PFにする場合は「米国の長期的な成長」を注視していく必要があります。全世界株をコアに据えるPFの場合は、アメリカ・日本・新興国株の比率を定期的に確認していく必要があります。状況に応じて日本株インデックスや新興国株インデックスなどを保有して分散割合を調節することをオススメします。
安定性や長期的な分散投資を重視するなら、全世界株式が適しています。投資初心者は短期的な暴落や調整が起こった時に動揺してしまう傾向になります。自分のリスク許容度が判断できない人や、リスク選好型でない方にオススメです。米国経済の強さを信じて、全世界株よりも高い成長をねらっていくならS&P500が適しています。過去のリターンを重視する人や今後も米国中心の成長を見込む場合に適していると考えられます。
小型株はいらないのか?
MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス (MSCI All Country World Index) | FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス (FESE Global All Cap Index) |
・e MAXIS Slim 全世界株式(オルカン) ・野村 はじめてのNISA全世界株式 ・Tracers全世界株式 など | ・SBI 全世界株式雪だるま ・SBI V 全世界株式 ・楽天 全世界株式(楽天VT) など |
約3000銘柄 | 約9000銘柄 |
大型~中型株 | 大型~小型株 |
小型株は大型株と比較して成長の余地が大きい企業が多く、収益成長が株価上昇に結びつきやすい傾向があり、高い成長ポテンシャルを秘めていると考える事ができます。また、小型株と大型株は異なる市場の動きをすることが多いため、ポートフォリオに小型株を加えることで、リスクを分散させる効果が期待できます。小型株市場は情報が少なくてアナリストのカバーも少ないため、投資家がまだ注目していない割安な銘柄を見つけやすい場合があります。特に日本株の小型株には外国人投資家が注目しないため、市場の非効率性を活用することが有効だと考えられています。
小型株投資において注意点すべき点はボラティリティの高さです。小型株は大型株よりも値動きが激しく、不況や市場の混乱時に大きく下落するリスクがあります。さらに小型株には流動性リスクが存在します。小型株は取引量が少ないことが多く、大量に売買しようとすると価格が大きく変動する可能性があります。小型株は短期的には不安定な値動きをすることが多いため、長期的な投資スタンスが求められます。
ポートフォリオ全体の10~30%程度を小型株に割り当てるのが一般的なアプローチです。大型株と小型株を組み合わせて幅広く補完するPFを作っていきます。小型株への投資を簡単にするためには、Russell 2000やS&P SmallCap 600 などの小型株ETFやそれに付随した投信を活用するのが便利です。小型株の中でも、異なる業種や地域に分散投資することでリスクをさらに抑えられます。
日本株はいらないのか?
ポートフォリオをシンプルに保つために、日本株を省略することも合理的です。全世界株式に含まれる日本株のウェイトは2024年12月現在で約5%程度です。全世界株式や米国株のみで十分な分散とリターンが期待できると考えるなら、日本株を追加する必要性は薄いかもしれません。しかし現金と全世界株式のみのシンプルなポートフォリオを想定すると、現金(日本円で保有する預金)の割合が大きくなってしまします。現金や日本国債などの無リスク資産で長期保有していくとインフレ負けしてしまう可能性があります。
日本株は円建てで取引されるため、為替リスクを避けたい場合に有効です。特に、生活費や将来の支出が円で発生する日本在住者にとっては重要なポイントです。日本株は、自動車や製造業など特定のセクターで世界的に競争力がある企業が多いです。他の国の株式市場では得られないセクターの特徴をポートフォリオに加えることができます。一部の日本企業は安定した配当を提供しており、インカムゲインを重視する投資家に適しています。
全世界株式や米国株を中心に投資している場合、日本株を必ずしも持つ必要はありません。ただし、為替リスクのヘッジやセクター分散を考えると、日本株を一定割合ポートフォリオに含めるのも合理的な選択です。自分の投資目標やリスク許容度に基づいて、柔軟に判断することが重要です。
新興国株はいらないのか?
全世界株式(VTや全世界株式インデックスファンド)保有者は、既に新興国株式を含んでいるため、追加で新興国株を買う必要性は低いです。2024年12月現在、新興国株の比率は通常10~15%程度に抑えられており、リスクとリターンのバランスが取られています。全世界株式は一つで十分な分散が効くため、個別に新興国株を増やす必要性はほぼありません。
米国を中心とした先進国株式保有者の直近のパフォーマンスは非常に強力ですが、将来どの地域が最も高い成長を遂げるかは予測困難です。そのような時に新興国(中国・インド・ブラジルなど)は、長期的にみて経済成長率が高い傾向にあるため、ポートフォリオの一部に加えることでリターン向上の可能性があります。また、米ドルの影響を受けすぎるのを避けるために、新興国株式は通貨分散にも寄与します。新興国株はボラティリティが高いですが、高リターンを得られる可能性もあります。特に長期投資ではリスクを取りやすいです。
全世界株式を買う場合は新興国株を追加で買う必要性は低いですが、米国株中心のポートフォリオでは、新興国株を組み入れることで分散効果が得られる可能性があります。ただし、最終的な判断については、投資の目的(成長重視か安定重視か)、リスク許容度、投資期間などを考慮に入れて考えるのがベストな選択になると思います。
新興国株は値動きが大きいため、安定を重視する投資家には向きません。また、米国市場を中心とした先進国株のみでもグローバル企業が多く含まれているため、新興国市場への間接的なエクスポージャーが得られます。政治リスクや規制の不透明さなど、特定の国や地域に懸念がある場合も新興国への投資を避ける一つの選択肢となります。
債券はいらないのか?
債券投資が有用な理由は主に4つあげることができます
①リスク分散の強化
債券は株式と異なる値動きをするため、株式市場が暴落した際の損失を緩和する効果があります。特に、リタイアに近い年齢やリスク許容度が低い場合は、債券がポートフォリオの安定性を高めます。
②安定した収入を得られる
債券は定期的な利息収入を提供します。配当がない株式や成長重視のETFと組み合わせることで、安定的な現金収入を得ることが可能です。
③金利環境に対応
金利が上昇する局面では、新規発行される債券の利回りが高くなるため、魅力的な投資先となります。また、株式のバリュエーションが割高になる局面では、債券が相対的に安全資産とみなされることがあります。
④為替リスクの緩和
外国株式(米国株など)への投資では為替リスクが伴いますが、円建ての債券や為替ヘッジされた外国債券を組み入れることでリスクを低減できます。
長期的な資産形成やリスク許容度が高い場合、全世界株式や米国株式中心でも問題ないことがあります。しかし、リタイア後の生活費を確保したい場合や資産価値の安定を重視したい場合は、債券を組み入れることでメリットが得られます。例えば「株式70%・債券30%」のように、リスク許容度に応じたバランスを取ることが推奨されます。これにより、リスクとリターンのバランスを最適化できます。ただし日本国債の金利は低く、インフレ負けしてしまう可能性があります。債券は金利、インフレ率、為替の状況などによって、債券のリターンやリスクは変わってきます。例えば、日本の金利が低い状況では、外債(米国債など)の利回りが魅力的になることがあります。投資目的やライフステージに応じて、株式と債券をどのように組み合わせるかを検討するとよいでしょう。
高配当株投資はいらないのか?
高配当株(VYMやSCHDなど)は、インカムゲインを重視する投資家に適しています。特に、リタイア後や副収入を得たい場合には有効です。株価の成長が比較的緩やかで、トータルリターンは全世界株や米国株に比べて低くなることがありますが、ボラティリティ(価格変動)は抑えられる傾向があります。高配当株は特定のセクター(エネルギー、金融、不動産など)に偏りがちであり、リスク分散を意識する必要があります。
長期的な資本成長を目指していて配当金をすぐに必要としない場合は、全世界株式や米国株に集中する方が適している可能性があります。反対に安定収入を求めている場合や配当を再投資しない場合(引退後の生活費など)には、高配当株投資が有効です。
2024年12月現在、オルカンやSP500はマグニフィセント・セブンを中心としたグロース株中心の構成です。一方、高配当株はバリュー株中心の構成となっています。うまく組み合わせる事によってバランスの取れたポートフォリオを作成する事ができます。高配当株から得られる配当・分配金は再投資するのか、自由に使うのか柔軟に投資戦略を変更していく事もできます。注意すべき点は配当・分配金再投資となる事です。NISA枠の使い方や税金を考慮に入れる必要があります。
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