米国高配当株ETF
分散性 | 約530銘柄に分散 |
分配利回り | 平均的な利回りは3%前後 |
経費率 | 0.06% |
スタイルシート | 大型ブレンド株 |
主な構成セクター | 金融、ヘルスケア、消費財など |
VYMは、バンガード社が提供する高配当株を対象としたETFで、米国市場での高配当銘柄を集めた指数(FTSE High Dividend Yield Index)に連動しています。時価総額加重平均型の株価指数で、REITをのぞく高配当利回り銘柄で構成される株価指数です。大企業を中心に安定した配当を提供する企業で構成されています。約530銘柄に分散されており、特定のセクターへの偏りが少ないです。平均的な利回りは3%前後で、安定したインカムゲインが期待できます。
VYMの主な構成銘柄
分散性 | 約75銘柄に分散 |
分配利回り | 平均的な利回りは3.5%前後 |
経費率 | 0.08% |
スタイルシート | 大型バリュー株 |
主な構成セクター | エネルギー、通信、生活必需品など |
HDVはブラックロック社が提供するETFで、高い配当を支払う米国企業の株式に投資することを目的としています。モーニングスター配当フォーカス指数(Morningstar Dividend Yield Focus Index)に連動しています。VYMと比較して、HDVは銘柄数が少ない約75銘柄の財務健全性が高い銘柄に分散されています。配当利回りはVYMよりもやや高く、3.5〜4%程度の利回りが見込まれます。
HDVの主な構成銘柄
分散性 | 80銘柄 |
分配利回り | 平均的な利回りは4%前後 |
経費率 | 0.07% |
スタイルシート | 中型バリュー株 |
主な構成セクター | エネルギー、不動産など |
SPYDは、ステート・ストリート社が提供するETFで、S&P 500指数の中から高い配当利回りを持つ上位80銘柄に投資することを目的としています。他の高配当ETFよりもさらに高い利回りを提供することが多いです。VYMやHDVより高配当の企業を対象とするため、経済状況によって株価の変動が大きくなることがあります。
SPYDの主な構成銘柄
米国高配当株式ETFを比較していくと、分散性に関してはVYMが現状500銘柄以上で最も分散が効いていてリスク分散に優れています。HDVとSPYDはVYMと比較して集中投資型になっていると考えることができます。配当利回りに関してはSPYD > HDV > VYMの順で基本的に高い利回りが期待できます。リスクに関してはVYMが最もリスクが低く、SPYDはセクター偏りが大きくてリスクが高い傾向と考えられます。これらの米国高配当株ETFは安定した配当収入を求める投資家にとって魅力的な選択肢ですが、リスク許容度や投資目的に応じてどれに投資していくかを選択したり、投資割合を調節したりする必要があります。
米国債券型ETF
分散性 | 約12,000銘柄 |
分配利回り | 平均的な利回りは2.5%程度 |
経費率 | 0.03% |
格付けウェイト | 主に米国債などの格付けAAAの債券が7割 |
AGGは、米国の総合的な債券市場に連動するETFです。米国政府債券、モーゲージ担保証券(MBS)、社債など幅広い種類の債券をカバーしています。リスクの低い債券が多く含まれており、全体の信用リスクを低く抑えることができます。
AGG保有のメリットは幅広い債券に分散投資することでリスクを低減することが出来ることです。価格の変動が少なく、安定的なインカム収益を得られる可能性が高いです。手数料も比較的低く設定されているため、長期保有でのコスト負担が少なくすることが可能です。デメリットとしては、低リスクの分だけ高リターンを期待しにくい点があげられます。また、金利上昇時に価格が下落する可能性があり、インフレが加速すると実質的なリターンが減少することになります。AGGは多くの債券に分散投資していますが、すべての債券市場をカバーできているわけではないことも補足しておきます。
分散性 | 約2,800銘柄 |
分配利回り | 平均的な利回りは3%程度 |
経費率 | 0.14% |
格付けウェイト | 主に格付けBBB以上の投資適格社債で構成 |
LQDは米国の投資適格格付け(信用力の高い)の社債に連動するETFです。多くは大手企業の発行する社債で構成され、AGGに比べるとリスクが少し高いですが、その分リターンも少し高めに期待することが出来ます。
LQD保有のメリットは社債の利回りが比較的高く設定されているため、AGGよりも多くのインカム収入が期待できることです。BBB以上の投資適格の格付けに限定されているため、信用リスクが一定の範囲に抑えられています。企業の成長に伴って債券価格が上昇する可能性も期待できます。デメリットとしては、社債が政府債券よりも価格の変動が大きいため経済状況や企業の財務状態に影響されやすい点があげられます。また、金利が上昇すると社債価格は下落する傾向があり、価格変動リスクが高まる可能性があります。さらにクレジットリスクとしての信用リスクがあるため、企業の信用力が低下した場合に債券価格が大きく下落する可能性があります。
米国債券ETFのガチホ(長期保有)戦略におけるメリットとして、特にAGGは価格変動が少なく定期的なインカムを得やすい点があげられます。LQDとAGGを組み合わせることで、債券市場全体のエクスポージャーを得ることが可能となります。また、再投資を通じて利息の複利効果を活かしていく事もできます。反対にデメリットとして考えられるのは金利上昇局面で債券価格が下落し、キャピタルロスが発生するリスクです。インフレが上昇すると債券の実質的なリターンが減少し、債券ETFを保有するメリットが薄れてしまう可能性があります。株式市場など他の高リスク・高リターン資産が成長している時には、相対的にリターンが見劣りする可能性があります。AGGとLQDはそれぞれ異なるリスク・リターン特性を持つため、投資目的やリスク許容度に応じて組み合わせを考えていく事が効果的です。
米国ETFを利用したPF戦略
参考までに、米国高配当株式ETFと米国債券型ETFを組み合わせて年率3.5%程度のインカムリターンを目指すポートフォリオについて解説してみます。
1.ポートフォリオの考え方
高配当株式ETFは、株式からの配当を通じてインカム収益を得ることを目的とし、債券ETFは比較的安定した利息収入を提供する役割を果たします。この組み合わせにより、リスクとリターンをバランスさせることができます。
2.高配当株式ETFの役割
アメリカではVYM(Vanguard High Dividend Yield ETF)、SCHD(Schwab U.S. Dividend Equity ETF)などが有名です。これらのETFは、配当利回りが高く、安定した配当を支払う企業を中心に投資します。(日本国内ではSCHDに直接投資できる証券会社はありませんが、遂に2024年9月に楽天証券で『楽天・高配当株式・米国ファンド(四半期決算型)』という投資信託が設定されました。) 高配当株式はインフレに強く、企業業績が好調であれば配当の増額も期待できますが、株式市場全体の変動や企業の業績悪化による価格下落のリスクがあります。
3.債券ETFの役割
AGGやLQDのような債券型ETFを利用することで、価格の変動を抑えながら安定的な収入を確保します。株式と異なる価格動向を示すためポートフォリオ全体のリスク分散効果が得られますが、金利上昇局面では債券価格が下落するリスクがあります。特に長期債券は価格変動に敏感です。
4.配分の例
米国高配当株式ETF | VYM、SPYD、HDV | 70-80% |
米国債券型ETF | AGG、LQD | 20-30% |
年率3.5%のインカムリターンを目指す場合、上記のような配分を考慮すると良いでしょう。米国高配当株式ETFの配当利回りをおおよそ3-4%程度、米国債券型ETFの分配金利回りをおおよそ2.5-3%程度と想定することで、目標に近いリターンが期待できます。
VYM、HDV、SPYDは四半期毎に分配、AGGとLQDは毎月分配です。基本的にはインカム(分配金)の再投資でPFを調整していきます。受け取った配当金や利息は再投資することで、複利効果を活かすことができます。特に長期保有の場合は、定期的な再投資をしていくことで資産の増加を目指す戦略が効果的です。課税口座で運用する場合は配当金や利息収入に対して税金が発生します。そのため、税効率の良いNISA口座での運用や、低コストのETFを選ぶことが重要となります。
このように、米国高配当株式ETFと債券型ETFを組み合わせることで、安定したインカム収益を得つつリスクを抑えたポートフォリオを構築できます。年率3.5%の目標に向けては、資産配分やリスク管理のバランスが鍵となります。
NISAでのインカム系投資
米国高配当株式ETFをNISA(少額投資非課税制度)で購入することには、いくつかのメリットとデメリットがあります。以下で詳しく解説します。
- 配当/分配金や売却益が非課税
NISA口座では、配当/分配金や売却益が非課税になります。通常、米国株式の配当には約20.315%の税金がかかりますが、NISAを利用すればこの課税が免除されるため、配当/分配金収入をより多く受け取ることができるというメリットがあります。反対にNISA口座では損益通算が出来ないことがデメリットとなります。NISA口座ではプラスの収益が無かったものと見なして税金が控除されますが、マイナスの損失もなかったものと見なされてしまうため損益通算による税控除は出来ません。
- 複利効果を最大化できる
NISA口座では配当/分配金が非課税で受け取る事ができるため、課税口座で支払う配当/分配金分の金額を多く再投資に回す事が可能となります。つまりNISA口座によって控除された税額分だけ複利効果を大きくすることが出来ます。配当金を元に追加購入を行うことで、長期的な資産成長が期待できます。
- 外国税額控除の制限
インカムゲインにかかる配当所得とキャピタルゲインにかかる上場株式の譲渡所得はNISA口座で控除することが出来ますが、それとは別に米国の配当/分配金には源泉徴収として10%の税金がかかります。通常の課税口座であれば外国税額控除を利用して税額を取り戻すことが可能ですが、NISA口座では外国税額控除が適用されないため、米国源泉徴収分の10%は還付されません。
- 旧NISAの非課税期間の制限
新NISAでは非課税期間が恒久化となりましたが、一般NISAは非課税期間が5年間で非課税期間終了までに売却しないと保有商品は課税口座に移管されてしまいます。非課税期間内での売却を検討している場合は注意が必要です。また新NISAでは各積立枠の利用金額に上限額が設けられていて、投資枠を使い切った後は非課税効果が終わります。長期保有を前提にする場合は、非課税期間終了後の戦略を考える必要があります。
インカム系ETFと投信の比較
VYM | SBI・V・米国高配当株式 インデックス・ファンド | |
購入手数料 | 0.45% | 0円 |
為替手数料 | 0円 | 0円 |
保有コスト | 0.06% | 0.1238%+α |
米国源泉徴収 | 10% | 0% |
上記はSBI証券での特定口座でVYMとVYM投信を購入した場合の比較です。SBI証券は『ゼロ革命』により電子交付書面にするだけで為替手数料とNISAでの購入手数料が0円になりました。
- 投信のコスト計算
投信のコストは信託報酬に隠れコスト(+α)を加算した保有コストになります。隠れコストに関しては決算時の運用報告書で確認する形になります。投信の米国源泉徴収分はファンドの中であらかじめ処理されているので、外国税額控除は不要となります。特定口座の場合は分配金と売却益に20.315%の税金がかかりますが、NISA口座では非課税です。インデックスファンドとは異なり、分配金を再投資する場合は新たに枠を余分に使っていく形になります。
- ETFのコスト計算
ETFのコストは購入手数料と為替手数料、保有コストになります。SBI証券の場合『ゼロ革命』で為替手数料は無料です。また新NISAで米国株式や海外ETFを購入した場合は『ゼロ革命』で購入手数料も無料になります。さらに、特定口座でも『SBI ETF コレクション』に選ばれているSPYDとAGGは購入手数料が無料です。
- EFF vs 投信 の決め手
ETFと投信のどちらで投資していくのがベターなのかに関しては、個人の投資スタイルとリスク許容度によって変わってくることになります。
証券会社 | 分類 | 投信ファンド名 | 信託報酬 |
SBI | インデックス VYM | SBI・V・米国高配当株式 インデックス・ファンド | 0.1238% |
SBI | インデックス SPYD | SBI・SPDR・S&P500 高配当株式インデックスファンド | 0.1338 |
SBI | アクティブ | SBI全世界高配当株式ファンド (スマートベータ・世界高配当株式) | 0.055% |
SBI | アクティブ | SBI欧州高配当株式分配ファンド (SBI欧州シリーズ-欧州高配当株式) | 0.099% |
SBI | アクティブ | SBI日本高配当株式分配ファンド (SBI日本シリーズ-日本高配当株式) | 0.099% |
SBI | アクティブ | SBI・J-REAT分配ファンド (SBI日本シリーズ-J-REAT) | 0.099% |
楽天 | インデックス SCHD | 楽天・高配当株式・米国ファンド (楽天SCHD) | 0.192% |
SBI | インデックス AGG | SBI・iシェアーズ 米国総合債券インデックスファンド | 0.0938% |
SBI | インデックス | SBI・iシェアーズ 全世界債券インデックスファンド | 0.1098% |
SBI 楽天 | インデックス | eMAXIS Slim 先進国債券インデックス | 0.154% |
VYM、HDV、SPYD、AGG、LQDのETFに関してはSBI証券と楽天証券ともに購入可能となっています。購入手数料が無料となるETF銘柄に関してもSPYDとAGGで、SBIと楽天ともに同じとなっています。一方、投信に関しては、SBIと楽天で大きく異なります。SBI証券で購入可能なインカム系投信にはVYM系投信、SPYD系投信、AGG系投信があります。一方、楽天投信では2024年10月現在でインカム系投信はSCHD系投信の『楽天・高配当株式・米国ファンド(四半期決算型)』のみです。
ETF NISA口座 | ETF 特定口座 | 投信 NISA口座 | 投信 特定口座 | |
配当所得課税 | 0% | 20.315% | 0% | 20.315% |
譲渡所得課税 | 0% | 20.315% | 0% | 20.315% |
米国源泉徴収 | 10%(※1) | 10%(※2) | 0% | 0% |
※2→米国源泉徴収10%分に関して、特定口座では確定申告で控除可能
NISA口座ではETF、投信ともに分配金や売却益に税金はかかりませんが、ETFの米国源泉徴収課税10%に関しては適応されません。特定口座ではETF、投信ともに20.315%の税金がかかり、ETFでは米国源泉徴収課税10%を外国税額控除として控除対象となります。
SBI証券や楽天証券での投信購入は100円単位で可能なため、定額設定のドルコスト平均法できっちりと積立していく事が可能です。一方ETF購入は指値注文が可能なため、スポット買いに向いています。市場が大きく下落している局面でも、チャート画面に張り付いていなくても段階的に買い下がっていく事ができるのでとても便利です。
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