ドルコスト平均法
ドルコスト平均法とは株式や投信、仮想通貨などの投資商品を定期的に一定の金額で購入していく投資手法です。この方法は、投資のタイミングに関係なく、定期的に同じ金額を投じるため、市場の価格変動リスクを軽減することを目指しています。ドルコスト平均法では、市場価格が高いときには少量の資産を購入し、逆に市場価格が低いときには多量の資産を購入することになります。これにより、長期的には購入価格の平均が平準化され、一度にまとめて投資するリスク(タイミングリスク)を避けることができます。
ドルコスト平均法のメリットは投資タイミングを計る必要が無いことです。定期的に購入することで市場のタイミングを気にせず投資できるため、リスクが分散されます。このリスク分散のことを時間分散と呼ぶこともあります。定期的に淡々と定額購入をしていくため、市場が乱高下しているような時でもチャートを見続けて高値掴みしてしまったり、狼狽売りしてしまったりするような事なく、心理的負担を軽減して投資を継続しやすくする仕組み作りができます。短期的な変動は全て受け入れて売却することなく保有し続ける事で、長期的な利益を享受して資産形成を目指すことができます。
ドルコスト平均法のデメリットは市場が急騰した場合、最初に一度に多額を投資していた方が利益が大きくなる可能性があることです。リスク分散して平均で買い続けるため、天井で買ってしまうリスクを抑えるかわりに底で拾う機会も失ってしまいます。積立投資の反対が一括投資です。以前も説明したと思いますが、リスクとはボラティリティ(振れ幅)の事です。一括投資のほうが積立投資よりも時間分散してない分だけハイリスクハイリターンとなります。
上図を参照してください。Aは一括購入した場合で、Bは毎月定額購入して購入後すぐに下落して少しずつ戻して購入時と出口時の基準価額が同じになった場合、Cは毎月定額購入して購入後すぐに上昇して少しずつ戻して購入時と出口時の基準価額が同じになった場合の購入口数を計算したものです。(購入口数は小数点以下は四捨五入してあります。)
ドルコスト平均法はあくまでも平均額で定期的に同額購入していく手法で、それ以上でもそれ以下でもありません。Bパターンのように購入後に下落してその後に戻ってくる場合は、一括購入よりもドルコスト平均法による積立購入の方が有利にはたらきます。反対にCパターンのように購入後に上昇してその後に戻ってきてしまう場合は、ドルコスト平均法よりも一括購入による積立購入の方が有利にはたらきます。
ドルコスト平均法で定期的に同額購入する事により時間分散効果を得るためには、短期的なリスク(価格変動)は受け入れてガチホ(継続保有)していく必要があります。この継続保有していくという事が実は簡単そうでとても難しいのです。Bパターンのように購入後に大きく下落して、ようやく戻ってきた場合には損失が無くなったと考えて一旦売却してしまいたくなります。長期的に右肩上がりなら、その後の上昇を取り逃してしまう事になります。Cパターンのように高値更新後に購入価格まで下がってきてしまった場合は、利益が無くなってマイナスに突入する前に一旦利益を確定してしまいたくなります。こういった人間の感情は「損失回避」といって、メンタル面を訓練しないと抗う事ができません。
「短期的なボラは全て受け入れて、長期的な成長を取りに行く。タイミングを計らずに定額積立することによって、最高値更新時には少量の口数を淡々と積立し、暴落時には多めの口数を根こそぎ買付する。」簡単そうだけど、15~20年以上継続していくのはとても難しいことなんだと覚えておいてください。
複利効果に関して
複利効果は、投資信託や他の投資商品で資産を長期的に増やす上で非常に重要な概念です。複利とは、得られた利益(利子や配当)を元本に再投資することで、次の期間からその利益にもさらに利息がつく仕組みです。これにより、時間が経つにつれて元本と利益の両方が増えていくため、資産が加速的に増加していきます。
単利は元本に対してのみ利息がつき、過去の利息には利息がつきません。一方、複利は元本だけでなく、過去の利息にも利息がつきます。
まずは上記の表のとうり、12万円を単利と複利で30年間運用した場合の差を見てみます。単利は12万円の投資元本に対して毎年6%の利息が付いていくという事です。つまり単利では毎年7,200円ずつ加算されていくということです。一方、複利では毎年付与されていく利息が再投資されていきます。つまり毎年の投資元本と付与された利息を合わせたものに対して1.06を掛けたものになります。数年では大した金額にはなりませんが、長い年月をかけると単利と複利では大きな差になる事がこの表でも確認することができます。
12万円を利回り6%の株に投資して受け取った配当を財布に入れておくのが単利計算、受け取った配当を株に再投資するのが複利計算と同義になります。(株を投資信託、配当を分配金に置き換えても同じです)
年率6%で配当を再投資せずに受け取る形で運用した場合、17年でインカムゲインとキャピタルゲインの合計は242,400円となって投資元本の12万円を超えてきます。また配当再投資した場合は、12年でインカムゲインとキャピタルゲインの合計が241,464円となり投資元本分を回収できる計算になります。複利のパワーは驚異的です。長期にわたって運用していくと、毎年の受取利息を再投資するかしないかで大きな差が生まれることになります。
複利とは投資で得られた利益を再投資し、お金がお金を生む仕組みの事です。 相対性理論で有名なアルバート・アインシュタインは、「複利は人類最大の発明だ。 知っている人は複利で稼ぎ、知らない人は利息を払う」という言葉を残したそうです。「複利で稼ぐ」とは、主に株や投信などの配当や分配金を再投資で受取利息を投資していくことです。「利息を払う」とは、主に考えられるのは借金です。住宅ローンや自動車ローン、クレジットカードのリボ払いなど、収益に対してマイナスにはたらく利息が複利効果によって爆発的に膨らんでいってしまうことです。
複利の魔法が発揮される条件
複利運用は、お金を投資していく際に非常に強力な効果をもたらす仕組みです。単純に言うと、複利とは「元本だけでなく、その元本が生み出す利益にも利益が付与されていく」という考え方です。これにより、時間が経つほど利益が加速度的に増えていきます。以下、複利の素晴らしさを初心者の投資家にも理解しやすいように解説していきたいと思います。
- 長期的に投資を続けることが大切です。
- 短期間での利益を狙うのではなく、長期的な視点でコツコツと増やしていくことが効果的です。
- 利益を再投資することで、より大きな利益が得られます。配当再投資する (利益を使わずに投資を続ける) ことで、より早く資産が増えていくようになります。
複利の効果を最大化するためのポイントは早めに始める事です。複利の効果は時間が経つほど強力になるので、できるだけ若いうちに始めるのが有利です。また安定した投資先を選ぶことが大切です。リスクが高すぎる投資を避けて安定した成長が期待できるものを選ぶことで、長期的に利益を確保しやすくなります。そして再投資を怠らないことです。誘惑に負けて利益を消費してしまうことなく、再投資していくことが重要です。複利の力を理解すると、長期的な資産形成の素晴らしさが見えてきます。時間を味方につけ、コツコツと積み立てていくことで、未来の大きな財産を築くことができるのです。
配当・分配金の再投資
オルカンやSP500、日経平均、TOPIXなどのインデックス投信は分配金0円のものが多く、基本的には投資信託の中で自動的に再投資で運用されているものが多いです。投信を売却するまでは余計なコストや税金を払うことなく効率的に投資を継続していくことができます。
株式やETFに関しては国内海外含めて再投資は自分でやることになります。年1回決算型、年2回決算型、年4回決算型等があり、それぞれ配当が支払われる回数が異なります。配当再投資に関しては戦略が求められます。PF比率を考えながら再投資銘柄を購入していきます。
配当や分配金のある銘柄には「権利確定日」があります。日本株では主に2営業日前が「権利付最終日」です。例えば権利確定日が30日(月)の場合、権利確定日の2営業日前である26日(木)が「権利付最終日」となり、権利付最終日の翌営業日である27日(金)が「権利落ち日」となります。
複利72の法則
倍になる年数 ≒【72÷年間利率(%)】
複利72の法則とは、投資の複利効果を簡単に計算するための法則です。この法則を使うと、お金が投資によってどのくらいの期間で2倍になるかをザックリと予測することができます。「72を年間利率で割る」ことで、お金が倍になるまでの年数を求めます。たとえば、年間利率が6%の場合、倍になる年数は72÷6%≒12年となります。この場合、年6%の利回りで投資を行うと、お金は約12年でザックリ2倍になるということがわかります。
ここで注意してもらいたいのが、複利72の法則は『≒(ニアリーイコール)』だという事です。正確な計算をしなくても、おおよその期間をすぐに見積もることができて、投資の効果を具体的にイメージしやすくなります。しかし年利20%以上になるような非常に高い場合や、年利1%以下になるような非常に低い場合には、誤差が大きくなります。また、手数料や税金などを考慮していないため、実際の投資結果とは異なる可能性があります。それでも、複利72の法則は投資の基本的な理解や目標設定の際に非常に役立つツールです。
投資を続けていく時に「金利」の概念はとても重要です。今後くわしく解説していきますが、期待収益率、配当利回り、標準偏差などのリスク計算、信託報酬などのコスト計算はすべて利回りが関わってきます。すべての利回りは一度「年利」に換算して考える癖をつけると、金利に対する考え方が強くなっていくと思います。それを応用して、物価(インフレ率)や10年国債利回り、主要国の政策金利、銀行の普通預金金利なども体系立てて考えていくことができるようになっていくと思います。
積立金額と目標利回り
年金終価係数を計算し、指定利率での表を作成してみます。 毎年一定金額を積立していく場合、将来の積立総額(元利合計)がいくらになるかを計算します。複利の爆発力を確認できるはずです。
運用年数 | 毎月1万円積立 | 毎月3万円積立 | 毎月5万円積立 |
---|---|---|---|
10年 | 1,581,720 | 4,745,160 | 7,908,600 |
15年 | 2,793,120 | 8,379,360 | 13,965,600 |
20年 | 4,414,320 | 13,242,960 | 22,071,600 |
25年 | 6,583,800 | 19,751,400 | 32,919,000 |
30年 | 9,486,960 | 28,460,880 | 47,434,800 |
カシオKEISANサイト→https://keisan.casio.jp/
生活の計算→お金の計算→積立計算→年金終価係数
将来受け取りたい目標額から逆算して、毎月の必要金額や利回りを算出していきます。想定利回りはオルカン投資で見込める年率6%としました。積立年数は30年で計算しています。積立額は毎月1万円、毎月3万円、毎月5万でシミュレートしてあります。上の表には10年、15年、20年、25年、30年の想定額のみを載せましたが、カシオのKEISANサイトでは1年ごとの想定額を確認できますのでご自分で実際に試してみてください。
20年~30年くらい継続すると複利効果が爆発的に大きくなることが確認できます。将来受け取りたい目標額に届かない時は、毎月の積立金額を増やすか、運用年数を増やすか、さらなるリスクを取って運用利回りを上げることになります。自分で数値を打ち換えてみて、どのように変化するのかを確認してみてください。ばけっと的にはこういったシミュレーションが大好物です。定期的に目標額を確認・修正しながら目標達成時を妄想してニヤニヤしています。
今後、年金シミュレーションやPF作成として詳しく説明していきますが、まずは想定積立額の計算の仕方を理解して下さい。計算式を覚える必要はありません。シミュレーションしたい時にどの計算に数値を打ち込めばいいのかを覚えるだけでOKです。
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