コア投資に据えている株式インデックス投資は、右肩上がりの経済成長見込みが前提となります。そして右肩上がりの経済成長の必要条件として、資本主義経済と公正な金融市場があげられます。つまりオルカンやSP500のインデックス投資で世界経済にBETするという事は、「今後も資本主義経済が続いていくか?競争による市場原理が保たれていているか?」といった事実を確認していく必要があるわけです。政府が財政政策を行なったり、中央銀行が金融政策を行なったりしているのは、行き過ぎた短期間のボラティリティを修正する事が本来の目的です。成長を阻害してまで分配をしようとするような政策を長期間にわたって続けていくことは、市場原理に適ってなくて持続可能な状況とはいえません。
ピケティの r>g の法則
トマ・ピケティの「r > g」は、彼の著書『21世紀の資本』で提唱された重要な経済概念です。これは、資本主義社会において、資本(資産)から得られる収益率 r が経済成長率 g よりも大きい場合、資本の蓄積が加速し、経済的不平等が拡大するという理論です。
「r」とは資本収益率(投資や資産から得られるリターン)です。株式、土地、不動産などから得られる利益や配当金を指します。「g」とは 経済成長率(GDP成長率)です。国全体の経済活動の拡大を意味していて、主に労働者の賃金や生産性の向上を通じて表れます。
ピケティによれば、歴史的に多くの時代で r は g を上回っており、その結果、富裕層はますます富を蓄積し、資産を持たない人々との間で不平等が拡大してきました。特に、資産を持たない労働者は経済成長の恩恵を十分に受けられず、格差が固定化しやすくなるとされています。解決策の一つとして、富裕層に対する累進課税や、資本への国際的な課税制度を提唱し、資本の集中を抑制することで不平等を是正することが示唆されています。
逆に考えてみると「投資をして r を増やしていかないと、給料の伸びだけでは生活が厳しくなっていきますよ」と言っている事と同義です。日本においてNISAやiDeCoの非課税制度が拡充されてきたのもそのためだと思います。このピケティの r>g の理論は、特に現代の資本主義社会における所得格差や資本集中の問題を議論する上で非常に重要な枠組みとなっていますが、日本での富裕層の定義は「純金融資産1億円以上の世帯」です。NISAやiDeCoを満額埋めたくらいで大きく増税されることは無いだろうと思います。
GDP(国内総生産)について
Y(国民所得)=C (民間消費)+I (民間投資)+G (政府支出)+(X (輸出)-M (輸入))
GDPとはGross Domestic Product の略で、国内総生産と訳されています。名目GDPとは、GDPをその時の市場価格で評価したもので、実質GDPとは名目GDPから物価の変動による影響を差し引いたものです。一般的に経済成長率を見る時は、実質GDPを用いることが多いです。GDPの約60%を占めているのがC (民間消費) です。そのため消費が増えていかないと基本的にはGDP成長に寄与しないため景気は良くなっていきません。
今後30~50年のGDP成長は、技術革新(AI、再生可能エネルギー、バイオテクノロジー)、人口動態の変化、気候変動とその対応、地政学的なリスクに大きく依存すると考えられます。米国と中国は依然として技術力を基盤に成長を続ける一方、インドは人口増加による労働力を強みとして急成長を遂げるでしょう。日本やEUは技術革新に頼りつつも、人口問題に直面します。新興国は産業の多様化が成長の鍵となっていきます。
投資初心者にはオルカン投資を勧めていますが、投資目論見書で2024年3月末現在のオルカンの国・地域別構成比率を確認してみると、先進国全体が90%で新興国が10%となっています。詳しく見ていくとアメリカだけで63.8%、日本が5.5%、中国が2.5%、インドが1.8%となっています。この比率が最適だと思えばオルカンでいいし、日本や新興国等の比率を変更したければ、今後PFを調整していく形になります。
1.アメリカのGDP成長予測
テクノロジー産業が強力な推進力となる一方で、成長率は緩やかに鈍化していく可能性が高いです。1970年代の石油ショック後の1980年代から1990年代にかけて、アメリカ経済はIT革命を通じて急速に成長しました。シリコンバレーを中心とした技術革新が特に影響を与え、2000年代以降も技術分野が経済を牽引しました。
今後の成長の原動力も引き続き技術革新です。特にAI、ロボティクス、バイオテクノロジー、再生可能エネルギーの分野で世界をリードする見込みです。また、イノベーションハブとしてのシリコンバレーやスタートアップ文化が引き続き経済成長を支えるでしょう。ただ、高齢化による労働力の減少、医療費や社会保障の負担増、政治的分断、所得格差などが課題として成長を抑制する可能性があります。また、気候変動による自然災害やエネルギー政策も大きな影響を与えるでしょう。
2.中国のGDP成長予測
成長率は減速するものの、内需と技術革新を通じて、依然として高い成長を維持する可能性があります。1970年代の改革開放政策以降、急速な工業化と都市化が進み、経済は飛躍的に成長しました。2000年代には「世界の工場」としての地位を確立し、輸出主導型の経済成長を達成しました。
今後の成長の原動力としても引き続き技術革新に注力し、特に5G、AI、バッテリーテクノロジー、宇宙産業などでリーダーシップを強化するでしょう。また、内需拡大と都市化が引き続き経済成長の柱となる可能性があります。課題としてあげられるのが高齢化による労働力の減少、環境問題、急速な経済成長による格差拡大、資源の枯渇や輸入依存度の増加などによる成長リスクです。また、共産党政権による政治的なリスクや国際的な対立も成長に影響を与える可能性があります。
3.日本のGDP成長予測
労働力不足を補うための自動化技術や移民政策が鍵となりますが、成長は今後も全体的に鈍化していくと予想されます。1970年代の高度経済成長期を経て、1990年代の「失われた10年」によって成長が停滞しました。その後も、人口減少や高齢化の影響で低成長が続いています。
成長の原動力としてあげられるものは技術革新です。特にロボティクスや自動化技術が経済成長の重要なドライバーになってきます。また、エネルギー効率化やグリーンテクノロジーへの投資も期待されています。課題としてあげられるのが高齢化と人口減少です。経済成長に深刻な影響を与える可能性が高く、国内需要の低迷や労働力不足が長期的な成長の妨げになる可能性もあります。
4.インドのGDP成長予測
若年層による労働力の豊富さと技術革新が成長を牽引し、インドは世界の主要経済大国として台頭する可能性があります。インドは近年急速な経済成長を遂げ、特にITとサービス産業が発展しています。人口増加とともに、消費者市場が急速に拡大しています。
今後もインドは世界最大の人口を抱える国となり、成長の原動力としてサービス産業とIT産業が経済成長のエンジンとなるでしょう。また、若年層の多さと都市化の進展が内需を拡大させます。課題としてあげられるのが教育の改善、インフラの整備、環境問題などです。いずれもインドの持続的な成長には不可欠で、高い人口増加率がメリットである一方、貧困層の増加や格差の拡大が課題となる可能性もあります。
5.EUのGDP成長予測
成長は緩やかで安定的ですが、気候変動への対応やデジタルトランスフォーメーションが成長を支えるでしょう。欧州は高度な技術力と安定した政治経済体制により、長期的に安定した成長を遂げています。特にドイツやフランスが主導的な役割を果たしてきました。
成長の原動力として気候変動対策、再生可能エネルギー、デジタル化の分野でリーダーシップを発揮する見込みです。ドイツ、フランスなどの先進国は技術革新と産業の高度化に注力しています。課題としてあげられるのが少子高齢化による労働力の減少、移民問題、域内の経済的格差拡大です。こういった問題はEU全体の成長を抑制する可能性があるばかりでなく、地政学的なリスクやEU内部の政治的分裂も課題となっています。
6.その他新興国のGDP成長予測
資源価格の変動に左右されやすい経済構造からの脱却が進むかが鍵となりますが、長期的には多くの新興国が技術と産業の高度化を進め、安定した成長を実現する可能性があります。ブラジルやロシアをはじめとした新興国は資源依存型の経済が多く、特に石油や鉱物資源に特化して依存してきました。経済成長は資源価格の変動に左右されることが多かったです。
資源依存型経済からの脱却と産業の多様化が課題ですが、豊富な自然資源と成長市場が今後も成長の原動力となると考えられます。特に南米やアフリカの一部地域では、都市化と技術革新が成長を支える可能性があります。課題としてあげられるのが政治的不安定さや汚職、インフラの不足、気候変動による自然災害などです。新興国の成長を抑制する可能性があるだけでなく、グローバルな需要の変動に対する依存度も高くなっています。
人口動態と高齢化
世界の人口は今後数十年でピークに達し、その後減少していく可能性があります。特に先進国では、出生率の低下と高齢化が進むと予想されています。これにより労働力が縮小し、経済成長に対する圧力がかかる可能性があります。一方で、アフリカや南アジアの一部では、引き続き人口増加が予想されており、これらの地域が新しい成長エンジンになる可能性があります。ただし、人口増加だけが世界経済の成長要因ではありません。教育やインフラ、技術の発展なども重要な成長要因となります。
技術革新(イノベーション)
長期的には、AI(人工知能)、ロボティクス、自動化、バイオテクノロジー、クリーンエネルギー技術などが今後の世界経済成長の大きなドライバーとなると予測されます。これらの技術は生産性の向上や、新しい産業の創出に貢献し、成長を促進するでしょう。
それからDX(デジタルトランスフォーメーション) も経済成長を牽引していきます。5G、6Gなどの通信インフラの進展や、デジタルエコノミーの拡大も今後の長期的な成長に貢献します。特にサイバーセキュリティやデータ管理に関連する分野の重要性が高まります。
環境・気候変動の影響
気候変動は、世界経済成長の持続可能性に大きな影響を与える長期的な要因です。極端な気象現象や海面上昇、資源不足による影響が一部の国や産業にダメージを与える可能性が考えられます。一方で、再生可能エネルギーやクリーンテクノロジーへの投資が、新たな成長機会を提供するでしょう。
持続可能な開発目標(SDGs)やカーボンニュートラルへの移行は、今後の数十年間にわたって多くの国や企業にとって重要なテーマとなります。再生可能エネルギーやエネルギー効率の改善に関する分野が経済成長の中心となるでしょう。
地政学リスクとグローバリゼーション
2024年10月現在でも米中対立、ウクライナ戦争、イスラエル紛争など、地政学的な緊張は、長期的な経済の安定に大きな影響を及ぼす可能性があります。これにより、今後もサプライチェーンの再編や地域間の経済連携に影響が出てくる可能性が予想されます。
グローバリゼーションは引き続き進展する一方で、地域主義や自給自足型の経済への移行が進む可能性があります。技術革新により国境を越えたビジネスが加速する一方で、特定の地域や産業の自立性が求められるようになるかもしれません。
新興国の台頭
中国やインドは引き続き世界経済の主要なプレーヤーとなり、技術や消費者市場の中心となっていくでしょう。また、アフリカは今後の数十年で急速な経済発展が期待されており、長期的な投資先としても注目されています。
南アジアや東南アジアは生産人口の増加率が顕著で、これらの地域は今後も成長が続くと予測されています。特にデジタルエコノミーや製造業の拡大が期待されていて、世界経済成長を牽引していくことが期待されています。
教育と人材育成の重要性
経済成長の鍵は、技術革新に対応できる労働力の育成にあります。教育の質の向上や、デジタルスキル、クリエイティブスキルの需要が増加していくため、これに対応する教育制度の整備が経済成長の基盤となっていくでしょう。
米中対立によるブロック経済化や中国や北朝鮮を中心とした地政学リスク、FANGを中心としたIT企業の独占禁止法対策、デフレからインフレへの転換、円安水準の継続などは、日本経済の持続的な成長にとっては有利に働くものもありそうです。そういった大局観に立ったものの考え方が出来るような人材が増えていくと、投資立国・金融立国として日本経済がプラス成長を継続できるような日がくる可能性が高いと考えられています。
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