個別株ファンダ分析

インカム系投資

米国高配当株に関してはVYMやSCHD、HDV、SPYDなどがあるんですが、日本高配当株のETFや投信は微妙です。単純に日経平均やTOPIXから高配当上位銘柄を拾っているものが多いため、増配の持続性に乏しい銘柄が含まれてしまう傾向にあります。現状、コストに関しても米国株市指数よりも日本株の指数のほうが高いものが多いです。そのため、日本株のインカム戦略としては、個別株を単元未満株で投資していきながら、自分でオリジナルのファンドを作るような感じにしていきます。

ばけっと投資では基本的にガチホ戦略です。インカム系投資は極論を言ってしまうと、「毎期の定期的な配当収入を獲得しながら、キャピタルゲインも減らさずに少しずつ成長していくような銘柄に投資していく」ことを理想として掲げています。そういった銘柄を確認していくために最低限確認しておきたいファンダ分析を紹介していきます。

配当利回り/取得利回り/配当性向

1.配当利回り

配当利回り (%) = 1株あたり年間配当金 ÷ 現在株価 × 100

配当利回りはインフレ率+2~3%くらいを目指したいところです。日本の物価が1.5%想定とすると、配当利回りは3.5~4.5%くらいを想定します。配当利回りが高くなるのは現在よりも年間の受取配当金が上がった時か、現在株価が下がった時です。配当利回りを定期的に確認していくと、経済サイクルや企業業績などによって配当利回りの変化を確認することができます。長期的な展望が変わらず魅力的なら、配当利回りが高いときに株を購入したほうが有利です。

配当利回りは各銘柄ごとに元来の利回り水準が異なりますので他銘柄との比較はできません。「A株は配当利回りが3%だから買わないで、代わりに配当利回りが4%のB株を買う」といった考え方は間違いです。「A株の配当利回りは2020年は3%だったけど、2024年になって4%を超えてきたので追加購入を検討する」といった考え方をするようにしてください。

2.取得利回り

取得利回り (%) = 1株あたり年間配当金 ÷ 1株あたりの購入金額 × 100

1株あたりの購入金額は「平均取得価額」で確認できます。複数の証券口座で保有していたり、NISA口座と特定口座で保有していたりする場合は集計する必要があります。『配当管理』などのアプリを利用すれば簡単に確認することができます。

取得利回りが高くなるのは増配された時か、1株当たりの購入金額が低くなった時です。上記のように2020年に配当利回り3%の時にA株を1000円で100株買い、そのまま保有し続けていると、2024年現在でA株は1100円になり、配当利回りは3.45%となりました。このように株を追加購入しなくても増配し続けることで購入当初3%だった取得利回りは2020年現在で3.8%に増加します。これが増配のパワーです。

現在株価が取得時よりも下がってないか、1株あたり配当金額が増加傾向にあるか(減配していないか)を四半期決算ごとに確認していきます。基本的には増配されると株価も上昇する傾向にありますので、配当利回りの変化はそれほど気にする必要はありません。購入タイミングを計るための目安だと考えてください。

3.配当性向

配当性向 = 1株あたり配当金 ÷ EPS (1株あたり純利益) ×100

配当性向(はいとうせいこう)は、企業が稼いだ利益のうち、株主に配当金として還元する割合を示す指標です。企業の収益力や株主への還元姿勢を理解するための大切な指標の一つです。たとえば、1株あたりの純利益が100円で、1株あたりの配当金が30円の場合、配当性向は30%となります。つまり、稼いだ利益の30%を株主に還元していることになります。

配当性向が高い企業は、株主への還元意識が高いと考えられます。ただし、利益の大半を配当に回すと内部留保(企業が将来の成長のために保持する資金)が減るため、将来の成長が制限される可能性があります。反対に配当性向が低い企業は、利益の多くを事業拡大や新規投資に回していることが多いです。成長を優先する企業にはこの傾向がありますが、投資家にとっては配当収入が少なくなるデメリットもあります。

理想的な配当性向は業界や企業の成長段階によって異なりますが、一般的には30%~50%くらいがバランスの良い水準とされています。

PERとPBR

1.PER (株価収益率)

PER (倍) = 株価 ÷ EPS (1株あたり純利益)

PER(株価収益率)とは、企業の株価がその企業の利益に対してどのくらいの倍率になっているかを示す指標です。たとえば、ある企業の株価が1000円で、1株当たりの利益(EPS)が100円の場合、PERは10倍(1000 ÷ 100 = 10)となります。

PERが高い場合、株価がその企業の利益に対して割高である可能性がある、もしくは、投資家が将来的に利益が増えると期待していると判断できます。成長企業や将来性がある企業に多く見られる傾向がありますが、実際の利益が伴わない場合には過剰評価となっているリスクもあります。反対にPERが低い場合、株価が利益に対して割安である可能性があることを示します。安定した企業や成熟した業界の企業に多く見られることがあり、投資家からは「割安株」と見なされてしまうこともあります。

業界ごとにPERの基準は異なります。例えば、ハイテク企業は成長期待が大きいため、一般的にPERが高い傾向にあります。一方で、安定的な収益が見込める電力会社や鉄道会社などは、PERが低めに設定されていることが多いです。

PERは「割安か割高か」を見極める一つの指標として活用されますが、PERだけで判断するのは危険です。PERは利益に依存するため、例えば一時的な利益増減がある場合には誤解を招くこともあります。他の指標(PBRやROEなど)と合わせて、企業全体のパフォーマンスや成長性を総合的に評価することが大切です。

2.PBR (株価純資産倍率)

PBR (倍) = 株価 ÷ BPS (1株あたり純資産)

PBR(株価純資産倍率)は、企業の株価がその純資産(自己資本)と比較してどのくらいの価値で取引されているかを示す指標です。例えば、企業Aの株価が1000円で、1株当たりの純資産が500円の場合、PBRは2倍(1000 ÷ 500 = 2)となります。このPBR 2倍という数字は、市場がその企業を純資産の2倍の価値で評価していることを意味します。

PBRが1倍とは、企業の株価が純資産と等しい状態を意味します。理論的には企業を解散して資産をすべて売却した場合に、株価と同等の価値が戻ってくると考えることが出来ます。PBRが1倍未満とは、企業が純資産以下で評価されていることを意味します。この場合、市場がその企業の資産価値よりも低く株価を見積もっていると解釈され、割安と考えられることが多いです。PBRが1倍以上とは、株価が純資産を上回って評価されている状態を意味します。その企業が資産以上の価値(成長性や収益性など)を持っていると市場が見ていることを示します。

基本的にPBRが1倍未満の銘柄は低PBRで割安だと考えられる事が多いですが、その企業に成長性や収益性の課題があると判断されている可能性もあります。安いからといって必ずしも買い時とは限りません。高PBRの企業は成長性が高いと見られていることが多く、特に成長株や技術系の企業でよく見られます。ただし高PBRが必ずしも企業の価値を保証しているわけではなく、過大評価されているリスクも考えられます。

EPSとBPS

1.EPS (1株あたり当期純利益)

EPS (円) = 純利益 ÷ 発行済株式数

EPS(Earnings Per Share)は企業の収益力を評価する指標の一つで、投資家が株式投資の判断をする際に重要な情報です。EPSは、「純利益」を「発行済株式数」で割ることで求められます。この指標は1株あたりの利益を示し、株主がどれくらいの利益を得られるかをイメージしやすくしています。EPSが高いほど会社が稼ぐ力が強いことを意味していて、株価の上昇に結びつく可能性も高くなります。たとえば、ある会社が純利益を100億円出し、発行済株式数が1億株の場合、EPSは次のように計算されます。

EPS = 100億円 ÷ 1億株 = 100円

この場合、1株あたりの利益は100円です。EPSが前年よりも増えている場合、その会社が収益性を向上させていることを意味し、投資家にとってプラスのサインとなります。

EPS成長率(%)=(当期EPS – 前期EPS)÷ 前期EPS × 100

EPSで利益成長の確認ができます。過去のEPSと比較して、利益が増加傾向にあるかを確認します。EPSが上昇している企業は将来性が期待されやすく、投資対象として魅力が増すと言えるでしょう。

2.BPS (1株あたり純資産)

BPS = 純資産 (自己資本) ÷ 発行済株式数

BPS(Book Value Per Share)は1株あたり純資産と呼ばれ、企業が持つ純資産を株式数で割った数値です。BPSは、企業の「解散価値」を表していると考えられます。仮に企業がすべての資産を売却して負債を返済した場合に、株主が得られる一株あたりの資産額がBPSに相当します。そのため、企業の財務的な健全性を測る一つの指標として使われます。

BPSが高いということは、企業の純資産が豊富であることを意味します。BPSが成長している企業は、自己資本の積み上げが進んでおり、経営が安定している可能性が高いと見なされます。

注意すべき点は、BPSはあくまで帳簿上の価値だという事です。企業のブランド価値や知的財産などの目に見えない資産は反映されないため、必ずしも企業の実際の価値を完全には示していません。そのため、株価がBPSの何倍であるかを示すPBR(株価純資産倍率)も併せて見て、企業の評価をすることが一般的です。

成長性や収益性に重点を置く投資家はBPSにこだわらない場合もありますが、安定性や倒産リスクを重視する場合はBPSが役立ちます。特にPBRが1倍未満の企業は、BPSよりも株価が低い場合があり、割安と判断されることが多いです。簡単に言えば、BPSは企業が持つ純資産の一株あたりの価値を示し、財務状態の安定性を評価する一助となります。

自己資本比率とROE

1.自己資本比率

自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資産 × 100

自己資本比率は、総資産のうちどれだけが「自己資本」で賄われているかの割合です。「自己資本(純資産)」を「総資産」で割ることで求められ、会社の財務の安定性を示します。

自己資本比率が高いほど、外部からの借入に頼らず、自社の資本で事業が運営できるので、財務の安定性が高いとされています。一般的に自己資本比率が40%~50%以上であれば安定していると見なされることが多いです。

2.ROE

ROE (%) = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100

当期純利益とは企業が1年間に最終的に得た利益のことで、自己資本とは株主が提供した資本や過去の利益の蓄積などの会社が持っている資産のうちで負債でない部分のことです。

ROE(Return on Equity、自己資本利益率)は、企業が株主から預かっているお金(自己資本)を使って、どれだけの利益を上げたかを示す指標です。株式投資において、企業の収益性や効率性を測る重要なポイントの一つとされています。たとえば、ある企業の自己資本が100億円、当期純利益が10億円だった場合、ROEは10% (10億円÷100億円×100) となります。

ROEが高いということは、企業が株主の資本を効率よく活用して利益を上げていることを意味します。ROEが高いほど少ない自己資本で多くの利益を出せるため、投資効率が良いと評価される傾向があります。

ROEは必ずしも高ければ良いというわけではありません。借入金を増やして自己資本を減らすと、見かけ上のROEが高くなることがあります。自己資本比率や負債のバランスも合わせて確認する必要があります。ROEは企業の収益性を評価する有力な指標ですが、他の指標と合わせて総合的に企業を分析することが重要です。

自己資本比率とROEを組み合わせることで、「収益性が高いが借金に頼っているのか」、「自己資本で安定しているが利益は少ないのか」など、企業の特性やリスクをより深く理解できます。

現金および現金同等物期末残高

「現金および現金同等物期末残高」というのは、企業が特定の会計期間(通常は1年や四半期)の終わりに持っている、現金や現金に近い資産の総額を指します。これは企業が自由に使える資金の量を示しており、企業の流動性(短期間で資金を動かせる能力)を測るうえで重要な指標です。

「現金」とは、文字通り企業の手元や銀行にある現金のことです。「現金同等物」とは、短期間(一般的には3か月以内)で現金化できる資産のことです。たとえば短期国債、コマーシャル・ペーパー、短期の定期預金などがこれに該当します。これらはすぐに現金化できるため、企業が急な支出に対応する能力を示す重要な資産です。

期末残高は、特定の会計期間の終了時点での現金・現金同等物の量です。これは次の期間への「持ち越し資金」となり、事業運営や新たな投資や債務の返済などに活用されます。期末残高が多い場合は、企業が資金繰りに余裕があると考えられ、成長や安定性が期待される傾向があります。一方で期末残高が少ない場合は、資金不足のリスクが高まる可能性があるため、投資家や株主にとってのリスク要素となりえます。

投資家や株主は、この「期末残高」を見て、企業の財務状況やキャッシュフローの安定性を評価します。現金が多い企業は、リーマンショックのような経済危機の際にも耐えられる余力があるとみなされ、リスクが低いと評価されがちです。また、将来の投資や配当の増加なども期待されるため、企業の価値判断にもつながります。

営業利益と営業キャッシュフロー

1.営業利益 (Operating Income)

営業利益 = 売上高 − 売上原価 − 販売費及び一般管理費

営業利益は企業が本業の営業活動(製品の販売やサービスの提供など)から得た利益です。営業利益を確認することによって、企業が本業でどれくらいの収益を生んでいるかを調べます。企業の本業での収益性を見る指標としてとても重要です。この数値が高いほど、本業で稼ぐ力が強いと判断できます。

2. 営業キャッシュフロー(Operating Cash Flow)

営業キャッシュフロー = 営業利益 + 非現金支出 − 運転資本の変動

営業キャッシュフローは、企業が営業活動を通じて実際に手元に残る現金の流れを示します。営業利益が計算上の利益であるのに対し、営業キャッシュフローは、実際に「キャッシュ」として手元に残る金額です。これは、企業が営業活動によって稼いだ現金をどれだけ持っているかを表しています。たとえば、減価償却費のような非現金支出は実際には現金が出ていかないため、営業キャッシュフローではプラスとして加算されます。一方で、売掛金や棚卸資産の増加は現金流出として調整されます。

営業利益とは利益としての「計算上の数値」のことで、企業の本業での収益力を見る指標として役立ちます。営業キャッシュフローとは「実際のキャッシュの流れ」のことで、企業が本業を通じて安定的に現金を生み出せるかどうかを示すため、企業の健全性を評価する際に役立ちます。たとえば、営業利益が高くても営業キャッシュフローが少ない場合、企業が売上を計上しても実際に現金を手に入れるまでに時間がかかっていることが考えられます。このような場合はキャッシュフローの状況が悪化していくリスクがあるため、投資家にとって注意が必要です。

ファンダ指標の調べ方

証券会社HP現在株価、配当利回り、PER、PBR、EPS、BPS
決算短信1株あたり配当額
有価証券報告書自己資本比率、ROE、現金および現金同等物期末残高、売上収益/営業利益、営業キャッシュフロー
期間集計取得利回り、配当性向

ばけっと投資推奨の必須ファンダ指標は上記で紹介してきたとうり「現在株価」「1株あたり配当額」「配当利回り」「取得利回り」「配当性向」「PER」「PBR」「EPS」「BPS」「自己資本比率」「ROE」「現金および現金同等物期末残高」「売上収益/営業利益」「営業キャッシュフロー」の合計14項目になります。

1.証券会社HP

「現在株価」「配当利回り」「PER」「PBR」「EPS」「BPS」などの指標は証券口座のホームページで確認することができます。期間集計データとして書き留めておくとともに、購入する際の割安/割高の目安として確認します。

2.決算短信

決算短信は四半期決算ごとに発表されて、企業のホームページのIR情報などから確認することができます。企業が株主や投資家に対して業績の概要を報告するための資料で、上場企業は四半期(3ヶ月)ごと、半年ごと、または1年ごとに財務情報を公表することが法律で義務づけられていますが、決算短信は特に速報性を重視して、決算後すぐに出されるものです。決算報告の一部で、非常に重要な指標や予想が簡潔にまとめられています。「売上収益/営業利益」「当期純利益」「1株当たりの利益(EPS)」「1株あたり配当額」「来期予想」などを確認していきます。保有PFとして適切な水準をキープで来ているかを判断します。

決算短信は、投資家が企業の健康状態や将来の成長性を判断するために重要な資料です。迅速に公表されるため、タイムリーな投資判断ができ、株価に大きく影響することもあります。特に、予想を上回る業績や予想を下回る業績が報告された場合、短期間で株価が大きく変動することがあります。

3.有価証券報告書

有価証券報告書は企業の本決算後に発表されて、企業のホームページのIR情報などから確認することができます。上記の必須ファンダ指標を確認しながら、企業の事業に対する進捗状況や財務状況、リスク情報などを確認していきます。

売上高や営業利益の推移、事業別の収益構造などが詳細に説明されているので、そこから企業の収益力や成長性について把握していきます。バランスシートやキャッシュフロー、利益計算書などの財務データを読み解くことによって、企業の財務的な健全性や資金繰りについての理解を深めていきます。また、経済環境の変動や競争状況、新技術の導入などが詳しく挙げられているので、企業のリスク管理の方法についても確認できます。

有価証券報告書は企業が投資家や株主に対して、事業内容や財務状況などの重要な情報を開示するための書類です。上場企業などの証券取引法の適用を受ける企業が、毎年提出することが義務付けられています。この報告書は、企業の信頼性や成長性、リスクなどを評価するために重要な資料であり、投資判断に役立つ情報が豊富に含まれています。

4.期間集計表

四半期集計や年間集計、決算時集計など、定期的に確認して「期間集計」としてオリジナルのエクセルデータを作っておくと長期的な推移を確認しやすくなります。自分の好みにカスタマイズして、オリジナルの集計表を作ってみてください。過去10年くらいの決算データ集計表が出来上がると、視覚的に増配の推移や、起業収益の推移、財務の健全性などが確認できるようになります。

今後紹介していきますが、個別株でのインカム投資は分散必須です。最低でも10セクターに10~20銘柄くらいは分散させることを推奨しています。1銘柄が紙くずになったとしても、10銘柄に分散していればリスクは-10%、20銘柄に分散していれば-5%に抑えることができます。ファンダ分析をすることによって、配当株投資としての前提が崩れた時には損切することも検討します。その場合はリスク分散のために別の銘柄を購入する必要が生じる場合もあると思います。四季報やブログなどから候補銘柄を5銘柄ほどスクリーニングしておいて、保有銘柄と同様に期間集計表を作成しておくことをオススメします。

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