「1.5億円を貯めたあと、それをどうやって取り崩すの?」ーーー資産形成のゴールを考えるほど、この「出口」の問題に突き当たります。
以前、サイドFIREまでのロードマップで「いくら貯めるか」は書きました。でも、貯めた資産を「どう取り崩すか」は、実はそれと同じくらい大事なのに、あまり語られていません。取り崩しを一つ間違えると、せっかく築いた資産が想定より早く尽きてしまうからです。
そして2025年12月、この「出口」の道具が大きく進化しました。SBI証券の投資信託「定期売却サービス」に定率指定・期間指定が追加され、さらにNISA口座にも対応したのです。これで、新NISAで積み立てたオルカンを、非課税のまま自動で取り崩していける環境がようやく整いました。
この記事では、この定期売却サービスの仕組みと、僕が実際に考えている「年3%で取り崩す出口戦略」の設定方法を、シミュレーションを交えて解説します。取り崩しは老後の話に見えて、実は「今どう積み立てるか」と表裏一体です。早めに知っておいて損はありません。
この記事でわかること
- SBI証券の定期売却サービス「3つの方式」の違い(定額・定率・期間指定)
- 新NISAのオルカンを「非課税のまま」自動で取り崩す方法
- 【最重要】定率指定の「年率」と「1回あたりの率」を間違えない設定のコツ
- 年3%で取り崩したときの資産と受取額のシミュレーション
- 僕のサイドFIRE後の出口戦略(iDeCo・年金繰り下げとの組み合わせ)
そもそも「取り崩し」を今から考えるべき理由
投資というと「増やす」ことばかり注目されますが、本当のゴールは「使う」ことです。貯めた資産を、必要なときに、なるべく長持ちさせながら現金化する——この出口の設計が、実は資産形成の後半戦の主役になります。
なぜ今から考えるべきなのか。理由は2つあります。
① 出口が決まると、入口(積立)の設計も変わるから。 「最終的に定率で取り崩す」と決めていれば、取り崩しやすい資産(=売却しやすい投資信託)を厚めに持っておこう、という発想になります。出口から逆算すると、今の積立の中身も変わってきます。
② 取り崩しは「機能」で自動化できる時代になったから。 かつては「毎月、自分で必要な分だけ売る」しかありませんでしたが、感情に流されて売りすぎたり、逆に不安で売れなかったりしがちです。定期売却サービスを使えば、あらかじめ決めたルールで淡々と自動売却してくれます。積立を自動化するのと同じ発想を、出口にも適用できるわけです。
SBI証券「定期売却サービス」の3つの方式
定期売却サービスは、保有している投資信託を、毎月など決まったタイミングで自動的に売却し、現金を受け取れるサービスです。SBI証券では2012年から「金額指定(定額)」が提供されていましたが、2025年12月6日に「定率指定」と「期間指定」が追加され、NISA口座にも対応しました。
まずは3つの方式の違いを整理します。

定額指定 … 毎回いくら、と金額で指定する方式(1,000円単位)。受取額が一定で家計は読みやすいですが、相場が下がっている局面でも同じ金額を売るため、下落時に口数を多く取り崩してしまい、資産が早く減りやすいという弱点があります。
定率指定 … 保有口数に対して何%売る、と率で指定する方式(0.1%〜50%を0.1%単位で指定)。FIREの取り崩しに最も向いている方式です。資産が減れば売る額も自動的に減るので、資産が長持ちしやすい。反面、受取額は毎回変動します。
期間指定 … 最終受取年月を決め、そこに向けて口数を均等に売っていく方式(最大50年)。「何歳までに使い切る」と決めたい人向けです。
共通の仕様として、手数料は無料、対象は投資信託のみ(ETF・外貨建てMMF・SBIラップなどは対象外)、売却頻度は毎月・奇数月・偶数月から選べます。ちなみに楽天証券の定期売却は毎月のみなので、頻度を選べるのはSBIの細かな利点です。
新NISAのオルカンを「非課税のまま」取り崩せるようになった
今回の拡充でいちばん大きいのは、NISA口座での定期売却が可能になったことだと思っています。
新NISAで積み立てたオルカンには、売却益に税金がかかりません。その非課税の資産を、定期売却サービスで自動的に取り崩していけるようになった。つまり「非課税で増やして、非課税のまま、自動で受け取る」という一気通貫の出口が完成したわけです。
ロードマップ記事でも「NISA枠1,800万円をフル活用して、取り崩し時の税金を最小化する」と書きましたが、その構想が、いまのSBIの機能でそのまま実現できるようになりました。これはFIREを目指す人にとって、地味ですが本当に大きな進化です。
【最重要】定率指定は「年率」ではなく「1回あたりの率」
ここが、この記事でいちばん伝えたい注意点です。定率指定でいちばんやりがちな、そして最も危険な間違いを説明します。
「FIREといえば4%ルール」という言葉が有名なので、多くの人が定率指定の欄に「4%」と入れたくなります。でも、これをやると大事故になります。
なぜなら、定率指定で入力する率は「1回あたりの売却率」だからです。毎月売却で「4%」と入れると、毎月4%×12ヶ月=年間48%を取り崩すことになってしまいます。1年で資産が半分近く消える計算です。

正しくは、年率を売却回数で割って、1回あたりの率に直す必要があります。
- 年4%で毎月取り崩したい → 4% ÷ 12 = 毎回 約0.3%
- 年3%で毎月取り崩したい → 3% ÷ 12 = 毎回 0.25%
僕自身は、後で書くとおり年3%で取り崩す想定なので、設定するなら「毎回0.25%」になります。ここは本当に間違えやすいので、設定前に必ず「年率 ÷ 回数」で計算し直してください。
なぜ僕は「3%」なのか|4%ルールをそのまま使わない理由
有名な4%ルールは、もともとアメリカの研究(トリニティスタディ)が根拠です。米国株を前提にした話で、そのまま日本人が使うには少し注意が必要だと考えています。
理由は、ロードマップ記事にも書いたとおり、税金と為替です。オルカンは為替の影響を受けますし、NISA以外の課税口座で取り崩せば約20%の税金もかかります。米国の研究がそのまま日本の手取りに当てはまるわけではありません。
なので僕は、少し保守的に年3%を出口の目安にしています。この「3%」を、SBIの定率指定なら「毎回0.25%」で自動化できる、というわけです。
年3%取り崩しシミュレーション
では、実際に年3%で取り崩すと、資産と受取額はどう推移するのか。仮にオルカン部分を1,500万円持っていて、年5%で運用しながら年3%を取り崩す場合のイメージがこちらです。

注目してほしいのは、資産が減っていないことです。運用リターン(5%)が取り崩し率(3%)を上回っている限り、資産は目減りせず、むしろ緩やかに増えながら、毎月の現金を受け取り続けられます。初年度なら毎月およそ3.8万円。これが定率取り崩しの強みです。
もちろん、これはあくまでイメージです。相場は毎年5%きっちり増えるわけではなく、暴落もあります。特に取り崩し初期に大きな下落が来ると、資産の減り方が想定より早くなる(シークエンス・リスクと呼ばれます)点には注意が必要です。定率なら受取額が自動で減るので定額よりは耐性がありますが、「設定したら完全放置」ではなく、年に一度は状況を見直すくらいの姿勢がいいと思います。
【一次情報】僕のサイドFIRE後の出口戦略
ここからは、僕自身が現時点で考えている出口の「時間割」です。取り崩しは単一の方法ではなく、複数の資金源を年代順に組み合わせる設計にしています。
① 大前提:まず副業収入と配当・分配金でやりくりする
サイドFIRE後は、基本的に副業収入と、配当株・分配金のキャッシュフローで生活費をまかなうのが理想だと思っています。この2つで足りるなら、資産(オルカン)を売る必要はありません。足りない分だけをオルカンの定率3%取り崩しで補う、という位置づけです。配当株は元本を売らずに現金を生む、オルカンは取り崩しの調整弁、という役割分担です。
② 60〜70歳:iDeCoを「つなぎ資金」に使う
iDeCoは60歳から受け取れるようになります(受給開始は60〜75歳の間で選択可)。僕はこのiDeCoを、60代の「つなぎ資金」として位置づけています。というのも——
③ 公的年金は70歳まで繰り下げる
公的年金は、受給を遅らせるほど増えます。1ヶ月あたり0.7%、5年繰り下げて70歳受給にすると42%も増額されます(最大75歳まで繰り下げ可能で、その場合84%増)。僕は今のところ70歳まで繰り下げて、増額された年金を一生の土台にするつもりです。
この「iDeCoで60〜70歳をつなぎ、70歳から増額年金にバトンを渡す」という組み合わせは、実は専門家も繰り下げ受給を活かす王道パターンとして挙げているものです。繰り下げ待機中の生活費をどうするかが繰り下げ最大の課題なので、そこにiDeCoを充てるのは理にかなっています。
④ 70歳以降:年金が入る分、取り崩しペースを緩める
70歳から増額年金が始まれば、その分オルカンの取り崩しは減らせます。つまり僕の取り崩しのピークはサイドFIRE後〜70歳で、70歳以降はペースダウンする、という時間設計です。
そして通底する前提として——副業を70歳まで続けられれば最高だと思っています。もし副業がうまくいかなければ、再びサラリーマンに戻る可能性も、正直あります。でも、それでいい。「いつでも会社に戻れる」柔軟さこそ、完全FIREではなく“サイド”FIREを選ぶ意味だと考えています。
【注意】iDeCoの「受け取り方」は税金が複雑
ひとつ、正直に注意を書いておきます。iDeCoの出口(一時金で受け取るか、年金形式か、併用か)は、税金の計算が非常に複雑です。
たとえば、iDeCoを一時金で受け取る場合、勤務先の退職金と受け取り時期が近いと、退職所得控除が重複調整されて税金が増えることがあります(いわゆる「10年ルール」)。また、iDeCoを年金形式で受け取ると、公的年金と合算されて課税が増えるケースもあります。
僕が「iDeCoは70歳前に受け取り切り、そこから増額年金を始める」と考えているのは、結果的にこの合算課税を避けられる面もあります。ただ、最適な受け取り方は、退職金の有無・金額・受給年によって一人ひとり変わります。ここは断言できる話ではないので、実際に受給が近づいたら、必ず自分の状況で試算することをおすすめします。この記事はあくまで「こういう論点がある」という地図として読んでください。
まとめ|出口が自動化できる時代になった
最後に要点を振り返ります。
- SBI証券の定期売却サービスは、2025年12月に定率・期間指定が追加され、NISA口座にも対応した
- FIREの取り崩しには、資産が長持ちしやすい定率指定が向いている
- 定率指定は「年率」ではなく「1回あたりの率」。年3%なら毎回0.25%(年率÷回数で計算)
- 運用リターンが取り崩し率を上回る限り、資産を減らさず受け取り続けられる
- 僕の出口は「副業+配当を土台に、足りない分をオルカン定率3%」「iDeCoで60〜70歳をつなぎ、70歳から増額年金」
「増やす」だけでなく「使う」まで設計して、はじめて資産形成は完成します。取り崩しの道具はここまで進化しました。あとは、自分に合った出口を、早いうちから描いておくことだと思います。
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※この記事は2026年時点の情報に基づいています。制度・手数料・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報はSBI証券および公的機関の公式サイトでご確認ください。
※シミュレーションは一定の前提に基づく試算であり、将来の運用成果を保証するものではありません。
※特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資は自己責任でお願いします。税金の取り扱いについては、必要に応じて税理士等の専門家にご相談ください。

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