高配当株ETFや債券ETFは、配当・分配金というキャッシュフローを得るインカム投資の中心的な道具です。この記事では、ばけっとが実際に活用している米国高配当株ETF(VYM・HDV・SPYD)と米国債券ETF(AGG・LQD)を、利回り・経費率・構成銘柄から比較し、NISA口座と特定口座の違い、ETFと投信の使い分けまでを2026年6月時点の情報で整理します。
なお、インカム投資全体の考え方やポートフォリオの組み方は「配当・インカム投資戦略|キャッシュフロー型ポートフォリオの組み方」で解説しています。
米国高配当株ETF
VYM(Vanguard High Dividend Yield ETF)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分散性 | 約580~620銘柄に分散 |
| 分配利回り | 3%前後 |
| 経費率 | 0.06% |
| 投資スタイル | 大型ブレンド株 |
| 主な構成セクター | 金融、生活必需品、ヘルスケアなど |
VYMはバンガード社が提供する高配当株ETFで、FTSE High Dividend Yield Index(REITを除く高配当銘柄で構成)に連動します。時価総額加重平均型で、大企業を中心に安定した配当を提供する企業で構成されています。3本の中で最も銘柄数が多く(2026年時点で約600銘柄)、特定セクターへの偏りが少ないのが強みです。 平均利回りは3%前後と控えめですが、その分トータルリターン(値上がり益込み)が安定しています。
主な構成銘柄:ブロードコム(AVGO)、JPモルガン・チェース(JPM)、エクソンモービル(XOM)、P&G(PG)、ホーム・デポ(HD)、ジョンソン&ジョンソン(JNJ)、ウォルマート(WMT)、アッヴィ(ABBV)、メルク(MRK)、コカ・コーラ(KO) など
HDV(iShares Core High Dividend ETF)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分散性 | 約75銘柄に分散 |
| 分配利回り | 3.5%前後 |
| 経費率 | 0.08% |
| 投資スタイル | 大型バリュー株 |
| 主な構成セクター | エネルギー、生活必需品、通信など |
HDVはブラックロック社が提供するETFで、モーニングスター配当フォーカス指数(Morningstar Dividend Yield Focus Index)に連動します。VYMより銘柄数が少ない約75銘柄で、財務健全性の高い銘柄に絞られています。配当利回りはVYMよりやや高く3.3~3.5%程度ですが、エネルギーや生活必需品への比重が大きく、構成は集中型です。
主な構成銘柄:エクソンモービル(XOM)、シェブロン(CVX)、ジョンソン&ジョンソン(JNJ)、アッヴィ(ABBV)、フィリップモリス(PM)、AT&T(T)、シスコシステムズ(CSCO)、ペプシコ(PEP)、コカ・コーラ(KO)、メルク(MRK) など
SPYD(SPDR Portfolio S&P 500 High Dividend ETF)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分散性 | 約80銘柄 |
| 分配利回り | 4.5%前後 |
| 経費率 | 0.07% |
| 投資スタイル | 中型バリュー株中心 |
| 主な構成セクター | 不動産、エネルギーなど |
SPYDはステート・ストリート社が提供するETFで、S&P 500指数の中から高配当利回り上位約80銘柄に均等加重で投資します。3本の中で最も高い利回り(4.5%前後)が魅力ですが、半年ごとの銘柄入れ替えとセクター偏重により、株価の変動は最も大きくなりがちです。 長期の増配は期待しづらく、インカムに特化した銘柄といえます。
主な構成銘柄:(年2回リバランスのため入れ替わりが大きい)エネルギー・不動産・公益・金融セクターの高配当銘柄が中心 など
米国高配当株ETFを比較すると、分散性はVYM(約600銘柄)が最も優れ、HDVとSPYDは集中投資型です。配当利回りはSPYD>HDV>VYMの順で高く、価格変動リスクもおおむねこの順で大きくなります。安定重視ならVYM、利回り重視ならSPYDというのが基本的な性格の違いです。リスク許容度や投資目的に応じて、どれに投資するか・どの比率で持つかを調整していきましょう。
※スペックは2026年時点の概数です。利回り・銘柄数・構成は変動するため、購入前に各社公式サイトで最新値をご確認ください。
米国債券型ETF
AGG(iShares Core U.S. Aggregate Bond ETF)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分散性 | 約12,000銘柄 |
| 分配利回り | 3.9%前後 |
| 経費率 | 0.03% |
| 格付けウェイト | 米国債やMBSなど高格付け(AAA中心)の債券が約7割 |
AGGは米国の総合的な債券市場に連動するETFで、米国債、モーゲージ担保証券(MBS)、社債など幅広い債券をカバーします。リスクの低い債券が多く、全体の信用リスクを低く抑えられます。幅広い分散により価格変動が比較的小さく、安定的なインカムを得やすいのがメリットです。一方で、低リスクの分だけ高リターンは狙いにくく、金利上昇時には価格が下落する点には注意が必要です。
LQD(iShares iBoxx $ Investment Grade Corporate Bond ETF)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分散性 | 約2,800銘柄 |
| 分配利回り | 4.5~5%前後 |
| 経費率 | 0.14% |
| 格付けウェイト | BBB以上の投資適格社債で構成 |
LQDは米国の投資適格社債に連動するETFです。大手企業の社債が中心で、AGGより少しリスクが高い分、利回りも高めです。BBB以上に限定されているため信用リスクは一定範囲に抑えられますが、社債は政府債より価格変動が大きく、金利上昇局面や企業の信用力低下時には価格が下落しやすい点はデメリットです。
債券ETFのガチホ戦略では、価格変動の小さいAGGで安定したインカムを得つつ、LQDを組み合わせて利回りを上乗せするのが基本です。 受け取った利息を再投資すれば複利効果も働きます。なお、利上げ局面を経て2026年時点では債券ETFの利回りが当時(2024年)より大きく上昇しており、インカム源としての妙味は増しています。一方、金利上昇局面でのキャピタルロスや、株式が好調なときの相対的な見劣りはデメリットとして意識しておきましょう。
米国ETFを利用したPF戦略
参考までに、米国高配当株式ETFと米国債券型ETFを組み合わせて、年率3.5%程度のインカムリターンを目指すポートフォリオを解説します。
1. ポートフォリオの考え方 高配当株式ETFで配当によるインカムを得つつ、債券ETFで比較的安定した利息収入を確保します。この組み合わせでリスクとリターンのバランスを取ります。
2. 高配当株式ETFの役割 米国ではVYMやSCHD(Schwab U.S. Dividend Equity ETF)などが有名です。かつてSCHDは国内証券会社では買えませんでしたが、2024年9月に楽天証券の「楽天・シュワブ・高配当株式・米国ファンド(楽天SCHD)」、同年12月にSBI証券の「SBI・S・米国高配当株式ファンド(SBI・SCHD)」が設定され、投信を通じて投資できるようになりました。 高配当株はインフレに強く増配も期待できますが、株式市場全体の変動や業績悪化による下落リスクがあります。
3. 債券ETFの役割 AGGやLQDのような債券型ETFで価格変動を抑えつつ安定収入を確保します。株式と異なる値動きをするためリスク分散効果が得られますが、金利上昇局面では価格が下落します。特に長期債は価格変動に敏感です。
4. 配分の例
| 区分 | 銘柄 | 配分 |
|---|---|---|
| 米国高配当株式ETF | VYM、SPYD、HDV | 70-80% |
| 米国債券型ETF | AGG、LQD | 20-30% |
※ばけっと投資では株式80%・債券20%のインカム系PF
高配当株式ETFの配当利回りを3~4%、債券型ETFの分配利回りを3~4%程度と想定すると、目標の年率3.5%に近いリターンが期待できます。
VYM・HDV・SPYDは四半期ごとの分配、AGGとLQDは毎月分配です。基本はインカム(分配金)の再投資でPFを調整していきます。受け取った配当・利息を再投資することで複利効果を活かせるため、特に長期保有では定期的な再投資が効果的です。課税口座では配当・利息に約20.315%の税金がかかるため、税効率の良いNISA口座の活用と低コスト銘柄の選択が重要になります。
NISAでのインカム系投資
米国高配当株式ETFをNISA(少額投資非課税制度)で購入することには、メリットとデメリットがあります。
配当・分配金や売却益が非課税 通常、米国株式の配当には約20.315%の税金がかかりますが、NISAならこの課税が免除され、配当・分配金をより多く受け取れます。反対に、NISA口座では損益通算ができません。プラスの収益が非課税になる一方、マイナスの損失もなかったものと見なされるため、他口座との損益通算による税控除はできません。
複利効果を最大化できる NISAでは配当・分配金が非課税で受け取れるため、課税口座なら税金で引かれる分まで再投資に回せます。控除された税額分だけ複利効果を大きくできるのがメリットです。
外国税額控除の制限 NISA口座でも、米国の配当・分配金には源泉徴収として10%の税金がかかります。通常の課税口座なら外国税額控除で取り戻せますが、NISA口座では外国税額控除が適用されないため、この米国源泉徴収10%分は還付されません。
非課税枠の考え方 新NISAでは非課税期間が恒久化されましたが、年間の投資枠(つみたて投資枠・成長投資枠)と生涯投資枠の上限が設けられています。分配金を再投資する際にも枠を消費する点には注意が必要です。長期保有を前提に、枠の使い方を計画的に考えていきましょう。
インカム系ETFと投信の比較
| 項目 | VYM(ETF) | SBI・V・米国高配当株式インデックス・ファンド |
|---|---|---|
| 購入手数料 | 0円(※) | 0円 |
| 為替手数料 | 0円 | 0円 |
| 保有コスト | 0.06% | 0.1238%+α |
| 米国源泉徴収 | 10% | 0% |
※SBI証券「ゼロ革命」により、海外ETFの買付手数料・為替手数料が0円(特定口座・NISAとも)。
上記はSBI証券の特定口座で、VYM(ETF)とVYM連動投信を購入した場合の比較です。
投信のコスト計算 投信のコストは信託報酬に隠れコスト(+α)を加えた保有コストになります。隠れコストは決算時の運用報告書で確認します。投信の米国源泉徴収分はファンド内であらかじめ処理されるため、外国税額控除は不要です。特定口座では分配金と売却益に20.315%の税金がかかりますが、NISA口座では非課税です。
ETFのコスト計算 ETFのコストは購入手数料・為替手数料・保有コストです。SBI証券では「ゼロ革命」で為替手数料が無料、海外ETFの買付手数料も無料です。さらに特定口座でも「SBI ETFセレクション」に選ばれているSPYDとAGGは買付手数料が無料です。
ETF vs 投信 の決め手 ETFと投信のどちらがベターかは、個人の投資スタイルとリスク許容度によって変わります。少額で自動積立したいなら投信、指値でスポット買いしたいならETF、というのが基本的な分かれ目です。
SBI証券と楽天証券の主なインカム系投信
| 証券会社 | 分類 | 投信ファンド名 | 信託報酬 |
|---|---|---|---|
| SBI | インデックス(VYM) | SBI・V・米国高配当株式インデックス・ファンド | 0.1238% |
| SBI | インデックス(SCHD) | SBI・S・米国高配当株式ファンド(年4回決算型/SBI・SCHD) | 0.1227% |
| SBI | インデックス(SPYD) | SBI・SPDR・SP500高配当株式インデックスファンド | 0.1338% |
| SBI | アクティブ | SBI全世界高配当株式ファンド(スマートベータ・世界高配当株式) | 0.055% |
| SBI | アクティブ | SBI欧州高配当株式分配ファンド | 0.099% |
| SBI | アクティブ | SBI日本高配当株式分配ファンド | 0.099% |
| SBI | アクティブ | SBI・J-REIT分配ファンド | 0.099% |
| SBI | インデックス(AGG) | SBI・iシェアーズ 米国総合債券インデックス・ファンド | 0.0938% |
| SBI | インデックス | SBI・iシェアーズ 全世界債券インデックスファンド | 0.1098% |
| 楽天 | インデックス(SCHD) | 楽天・シュワブ・高配当株式・米国ファンド(楽天SCHD) | 0.192% |
| SBI/楽天 | インデックス | eMAXIS Slim 先進国債券インデックス | 0.154% |
※2026年6月時点の主なインカム系投信。信託報酬は改定されることがあります。
VYM・HDV・SPYD・AGG・LQDのETFは、SBI証券・楽天証券ともに購入可能です。買付手数料が無料となるETF(SPYD・AGGなど)も両社共通です。
一方、投信のラインナップは2社で違いがあります。かつて国内でSCHDに投資できるのは楽天SCHDのみでしたが、2024年12月にSBI・SCHD(信託報酬0.1227%)が登場し、より低コストで投資できる選択肢が増えました。 SBIはこのほかVYM系・SPYD系・AGG系や全世界/欧州/日本の高配当・J-REIT分配ファンドなど幅広く揃えています。なお、SBI投信には分配を出す「年4回決算型」と、再投資で値上がり益を狙いやすい「年1回決算型」が揃っているものも多く、目的に応じて選択することができるようになっています。
NISA口座と特定口座の税金
| 項目 | ETF NISA口座 | ETF 特定口座 | 投信 NISA口座 | 投信 特定口座 |
|---|---|---|---|---|
| 配当所得課税 | 0% | 20.315% | 0% | 20.315% |
| 譲渡所得課税 | 0% | 20.315% | 0% | 20.315% |
| 米国源泉徴収 | 10%(※1) | 10%(※2) | 0% | 0% |
※1→NISA口座では米国源泉徴収10%分は控除不可
※2→特定口座では確定申告により外国税額控除で控除可能
NISA口座ではETF・投信ともに分配金や売却益に税金はかかりませんが、ETFの米国源泉徴収10%は適用されません(還付されません)。特定口座ではETF・投信ともに20.315%の税金がかかり、ETFの米国源泉徴収10%分は外国税額控除の対象になります。
積立とスポット購入 SBI証券・楽天証券の投信は100円単位で買えるため、定額のドルコスト平均法できっちり積立できます。一方ETFは指値注文ができるため、スポット買いに向いています。市場が大きく下落した局面でも、チャートに張り付かずに段階的に買い下がっていけるので便利です。
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