こんにちは、ばけっとです。
世界中で長期金利が上昇し、財務省・金融庁から出されるらしい「個人向け国債の税優遇の要望」が話題となっています。「NISAで買えるようになるのか?」「iDeCoで買えるようになるのか?」「サプライズで別枠を設定してくるのではないか?」「日銀が国債保有を減らしていて、買い手拡充のために魅力の乏しい年限を割り当てられるのでは」と憶測が飛び交っています。
正直に最初に打ち明けておくと、僕はいま個人向け国債を1円も持っていません。
でも、まったく興味がないわけじゃない。むしろ逆です。僕の目標ポートフォリオでは資産の約5%を「債券」に割り当てると決めていて、その枠を現状は米国債券ETF(AGGとLQD)で埋めています。この債券枠が目標の5%を割ってきたら、次に買い足すのは米国債券ETFではなく個人向け国債かもしれない——そう考えて、ずっと横目で観察している商品なんです。
なぜ、すでに債券ETFを持っているのに、わざわざ個人向け国債が気になるのか。ひとことで言えば「為替」です。この話は後半の体験パートでたっぷり書きます。
その前に、この記事のいちばん大事な問いをテーブルに乗せます。
個人向け国債は、インフレに勝てるのか?
※この記事は「もし個人向け国債がNISA枠に設定されたら?」といったテーマで僕自身の資産設計の考え方を整理したものです。特定の商品の売買を勧めるものではなく、利率や物価の数字は執筆時点(2026年8月)のものです。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。
そもそも個人向け国債の利率はどう決まるのか
個人向け国債には3タイプあります。まず利率と、その決まり方を整理しておきます。
| タイプ | 現在の利率(税引前) | 利率の決まり方 |
|---|---|---|
| 変動10年 | 1.87% | 10年債利回り × 0.66 |
| 固定5年 | 2.06% | 5年債利回り − 0.05% |
| 固定3年 | 1.71% | 3年債利回り − 0.03% |
※2026年8月募集分。
ポイントは3つです。
- 3タイプとも「国債利回り」に連動していて、違いは”どの年限”を見るか。変動10年だけ「×0.66」という係数がつくので、10年債が動いても6割しか利率に反映されません。
- 年0.05%の最低保証があり、元本は額面で必ず戻ってくる(価格変動で元本割れしない)。
- 発行から1年経てば中途換金できる(直前2回分の利子×0.79685が差し引かれるが、元本は無傷)。
この「元本が減らない」という一点が、あとで僕の判断に効いてきます。まず先に、いちばん気になる”インフレとの勝負”を数字で見ていきましょう。
本題:名目利率をインフレと突き合わせる
利率だけ見ると「1.87%か、悪くないな」と思えます。でも、インフレを考えないお金の話は片手落ちです。
まず現在地の確認から。足元の日本のインフレ率は、2026年7月分の全国消費者物価指数(総合)で前年同月比+1.7%。日銀の物価目標2%をやや下回る水準で推移しています。この「1.7%」を、まず頭の隅に置いてください。
そして、忘れちゃいけないもう一人の敵がいます。税金です。僕は個人向け国債をNISAではなく特定口座で買うつもりなので(理由は後述します)、利子には20.315%の税金がかかります。つまり僕にとっての本当の手取り利率はこうなる。
| タイプ | 税引前 | 税引後の手取り |
|---|---|---|
| 変動10年 | 1.87% | 1.49% |
| 固定5年 | 2.06% | 1.64% |
| 固定3年 | 1.71% | 1.36% |
ここで最初の”うっ”が来ます。税引後の手取りは、変動10年で1.49%。いまのインフレ率1.7%を、すでに下回っているんです。
実質利回り = 手取り − インフレ
税引後の手取りから、インフレ率を引いたものが「実質利回り」。物価上昇を差し引いて、購買力ベースでお金が本当に増えているかどうか、を測る数字です。特定口座(税引後)で計算するとこうなります。
| タイプ | インフレ1.7%(現状) | インフレ2% | インフレ3% |
|---|---|---|---|
| 変動10年 | −0.21% | −0.51% | −1.51% |
| 固定5年 | −0.06% | −0.36% | −1.36% |
| 固定3年 | −0.34% | −0.64% | −1.64% |
……見事に全部マイナスです。名目では確実にプラスの利子がつくのに、税金とインフレのダブルパンチを受けると、購買力はむしろ目減りしている。これが「安全資産の錯覚」の正体だと僕は思っています。名目は守れても、実質は削られている。
損益分岐インフレ率という考え方

もう一つ、きれいな見方を紹介します。「実質がちょうどトントンになるインフレ率」=損益分岐インフレ率です。特定口座なら、その商品の”税引後利率”がそのまま分岐点になります。
- 変動10年:インフレ1.49%まではプラス
- 固定5年:インフレ1.64%まで
- 固定3年:インフレ1.36%まで
現状のインフレ1.7%は、この3つの分岐点を全部超えてしまっている。だから「今の利率 × 特定口座」では、インフレに勝てていない——これが数字の出した、けっこう厳しい答えです。
では、なぜ僕はそれでも個人向け国債を検討するのか。ここから先は数字ではなく、僕自身の話です。
体験:米国債券ETF(AGG・LQD)を持って感じた”為替の重さ”
ここまで読むと「じゃあ債券なんてやめとけ」と思うかもしれません。でも僕は債券枠そのものは必要だと考えていて、現に米国債券ETFのAGGとLQDを持っています。
問題は、これがドル建てだということ。
直近は円安なので、円換算の評価額は膨らんで気分がいい。でも、忘れられない場面があります。コロナショックのとき、1ドルが101円台まで急に円高へ振れた瞬間です。あのとき僕は、正直かなり焦りました。「守りのために持っているはずの債券」が、為替のせいで円換算では評価損に沈んでいく感覚。安全資産だと思って握っていたものが、いちばん不安なタイミングで足を引っ張る——この居心地の悪さは、商品ページのスペック表には絶対に載っていません。
もし円建てで、しっかりインカムが取れる債券があるなら、こういう為替の消耗から解放される。それだけで、僕にとってはかなり魅力的なんです。
判断:僕が選ぶなら「特定口座で変動10年」
以上を踏まえた、現時点の僕の結論です。理由を4つに分けて書きます。
① なぜ円建て(個人向け国債)か——オルカンとの相性
僕の資産の主役はオルカンやVT(全世界株)です。これはすでに、たっぷり外貨(ドル)建ての為替リスクを抱えている。そこへ米国債券ETFを足すと、株でも債券でも為替リスクを”二重取り”することになります。だったら守りの債券は円建てにして、「外貨建て株式 × 円建て債券」という組み合わせにするほうが、相関の面でも分散が効くはず。コロナショックで痛感した「不安なときに何もかも同じ方向へ動く怖さ」を、せめて通貨の面では減らしておきたいんです。
② なぜ変動10年か
インフレと金利は連動しやすい。物価が上がる局面では金利も上がりやすく、変動10年ならその上昇を半年ごとに取り込めます(×0.66の目減りはあるけれど)。今の水準で固定にロックするより、上昇余地を残せる変動のほうが、インフレとの持久戦には向いていると判断しました。
ただ、調べてみて分かったこともあります。変動10年は利率が半年ごとにリセットされるので、”いつ買ったか”による利率の差はほとんど出ない。だから僕が考えている10分割の買い方は、「利率の分散」というより、購入タイミングと、発行後1年間の換金ロックをずらすための分散、と割り切っています。満期がきたら、再投資するかどうかは11年目にその時の環境で考えればいい。
③ なぜ特定口座か——NISA枠は使わない
これは以前Xでも書いた通りで、僕はNISA枠で国債を買うことには反対派です。1800万円しかない非課税枠は、期待リターンの高いオルカンにこそ使いたい。年2%前後の国債に貴重な枠を割くのは、機会費用が大きすぎる。だから国債は特定口座で買う。もし株式と競合しない別枠を作ってくれるなら、喜んで買います、というのが正直なところです。
(※2026年8月現在、個人向け国債はまだNISA等の非課税枠には設定されていません)

④「3%欲しい」の意味と、元本保証の使い道
さっき体験パートで「しっかりインカムが取れるなら」と書きました。僕の中の目安は、円建てで3%くらい。これは何となくの数字じゃありません。税引後でインフレに気持ちよく勝つには、名目でだいたい2.1%以上(インフレ1.7%を税引後で超えるライン)が要り、2%インフレまで見据えるなら2.5%以上が必要になる。3%というのは、税金とインフレを両方いなして、実質でもプラスを確保できる”安心ライン”なんです。今の1.87%では、正直まだ物足りない。
それでも僕が個人向け国債を評価するのは、元本保証があるからです。株価が大暴落したとき、変動10年を中途解約すれば(元本は無傷のまま)そのままスポット買いの弾になる。サイドFIRE後も、暴落局面でオルカン等を取り崩したくないときに、国債を崩して数年を凌ぐ”つなぎ”にできる。インフレに勝つための攻撃力ではなく、為替と価格変動から守られた、いつでも額面で現金化できる守りのバッファとして設計に組み込む——それが僕の想定している使い方です。
まとめ:勝てるかではなく、どう組み込むか
「個人向け国債はインフレに勝てるのか?」
数字の答えは、はっきりしています。今の利率 × 特定口座では、勝てていません。 税金とインフレのダブルパンチで、実質利回りはマイナス圏。ここは誠実に認めるべきところだと思います。
でも僕は、それでこの商品を切り捨てるつもりはありません。個人向け国債の価値は「インフレに打ち勝つ攻撃力」ではなく、「為替に振り回されない円建て・元本保証・いつでも額面で現金化できる」という守りの質にあるからです。
インフレに勝つ主役は、あくまで株式(オルカン)。国債はその主役が思いきり戦えるように、後ろで支える控えの守備固め。そう捉え直すと、問いは”勝てるか負けるか”の一問一答から、”どう組み込むか”へと変わります。僕にとっての答えは、債券枠の5%が割れてきたら、変動10年を特定口座で、守りのバッファとして少しずつ——です。
僕がなぜ「攻めはオルカン、守りは為替から切り離す」という設計にたどり着いたのか。その全体像や、2033年のサイドFIREに向けたポートフォリオの考え方は、運営者ストーリーとまとめ記事のほうに書いています。よかったらそちらも覗いてみてください。
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